「神輿渡御」復興の響き 楢葉・お浜下り神事、伝統を次代につなぐ
福島県楢葉町の大滝神社に伝わる県指定重要無形民俗文化財「お浜下り神事」で9日、主要な神事となる「神輿渡御(みこしとぎょ)」が行われた。神事では、木戸川上流部の大滝神社から迎えたご神体をみこしに載せて木戸八幡神社から練り歩き、沿岸部で海の水により地区を守る力の再生を図る。東日本大震災後初めて伝統的な神事を全て復活させた形式となり、関係者がさらなる復興を願った。
木戸八幡神社からみこしが出発したのは午前9時30分過ぎで、地区の若手でつくる「小塙(こばな)義団」が担ぎ手などを務めた。義団総理(代表)の高木幹保(みきお)さん(49)は神事の完全復活を受け「身が引き締まる。先人の伝統を自分も後輩に引き継ぐことができる」と述べた。
一行が笛や太鼓の音色を響かせながら地区を練り歩くと、家々から住民が出てきて、さい銭などを供えた。みこしの後には子どもみこしも続いた。途中で出羽神社のみこしと合流し、共に海の方向に行列を組んだ。
出羽神社の氏子らでつくる羽黒会の北郷三郎さん(70)は「新型コロナウイルスなどの影響でしばらく間が空いた。徐々に盛り上げていきたい」と語った。
行列が海沿いの津神社(津之神社)に到着すると、大滝神社宮司の宇佐神正道さん(67)が堤防の先にある太平洋に向かい、海水をサカキにまとわせた。そのサカキでみこしをみそぐ「お塩垢籬(しおごり)」の神事が行われ、木戸八幡神社への帰路に就いた。子どもみこしを担いだ渡辺莉央さん(10)は「初めて参加して楽しかった」と話した。
次世代への継承につながる一日となり、大滝神社の氏子総代長の渡辺司さん(77)は「コロナなどのうっぷんを吹き飛ばすような青空だった」と満足げだった。10日はご神体を大滝神社に戻す「還山祭」が行われる。
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