心をつなぐ神輿渡御 双葉の中野八幡神社

 
中野八幡神社を出発する神輿渡御=双葉町

 双葉町の浜野行政区にある中野八幡神社で30日、みこしが地区を練り歩く「神輿渡御(みこしとぎょ)」が行われた。行政区をつくる中野、中浜地区には東日本大震災後、町の産業団地や県復興祈念公園が整備されている。神輿渡御は地区の伝統を継ぐ神事として企画され、担ぎ手の元気な「わっしょい」のかけ声が復興の最前線の地に響いた。

 中野、中浜地区は津波で大きな被害を受けた。町の産業団地の用地となったこともあり、住民の心のよりどころは地区内に2021年に再建された中野八幡神社となっている。関係者によると、同神社ではかつて社殿の遷宮などの際に神輿渡御が行われていたという。

 同神社には震災後の再建を受け、兵庫県淡路市の伊弉諾(いざなぎ)神宮からみこしが寄贈されていた。このため、中野八幡神社氏子総代の高倉伊助さん(67)らが協議し、住民の心をつなぐ行事として神輿渡御の実施を決めた。当日は震災前の49世帯のうち、半数近くから住民が駆け付けた。

 みこしの担ぎ手は、町民有志でつくる任意団体「夢ふたば人」のメンバーや消防団員、近隣の企業の従業員らが務めた。子どもみこしも出され、東日本大震災・原子力災害伝承館や町産業交流センター、浅野撚糸(ねんし)双葉事業所の周囲を練り歩いた。