「産品魅力伝える」 飯舘で総菜加工再開、までい工房・渡辺さん

 
震災と原発事故を経て村内の加工場を再開させた渡辺さん=飯舘村

 飯舘村特産のカボチャ「いいたて雪っ娘(こ)」の栽培や、加工品販売を手がける「までい工房美彩恋人(びさいれんと)」代表の渡辺とみ子さん(69)=福島市=は2日、村内の自宅敷地内に新たに整備した加工場で、東日本大震災から約12年ぶりに総菜の加工作業を再開させた。渡辺さんは「やっぱり飯舘で作業ができるのはいいね。今後も飯舘の特産品の魅力を発信していきたい」と気持ちを新たにした。

 渡辺さんは震災前から特産品の生産、普及に汗を流してきた。東京電力福島第1原発事故で全村避難を余儀なくされると福島市に避難。「いいたて雪っ娘の種をつなぐことを決して諦めてはいけない」。この一心で避難先でも栽培を続け、避難指示解除後は村内での作付け再開にこぎ着けた。

 現在はカボチャの栽培以外にも凍(し)み餅や凍み大根の製造、手作り弁当の配達などさまざまな活動に取り組んでいる。ただ、加工作業を行うのは避難先の加工場だった。村内の事業所などに弁当を配達する際は未明から準備が必要で、少しでも負担を減らそうと村内の加工場を復活させた。震災前までの加工場は全村避難で維持管理が困難になり、2017年に解体された。新しい加工場は、18年に67歳で死去した夫福男さんが生前、大工だった経験を生かして整備した。

 再開初日から五目おこわやみそじゃがいもを作り、村内の道の駅に出荷した。渡辺さんは「今月は弁当の注文が多く入っているから忙しくなるよ」と笑う。

 渡辺さんには福男さんと描いた夢がある。村内の自宅を改修し「農泊」を始めることだ。加工場の再出発の日を「大安」で「一粒万倍日」に合わせた渡辺さんは胸の内を明かした。「飯舘ならではの食の魅力を、凍み餅作り体験などを通じて感じてもらい『飯舘ファン』を増やしたい。それがきっと飯舘の活性化にもつながるはず」(福田正義)