笛になった「かしまの一本松」 古里に帰還、奏でた優しい音色

 
伐採前の「かしまの一本松」=南相馬市鹿島区(左)かしまの一本松を使った笛を演奏する小野さん(右)

 東日本大震災の津波を耐えた「かしまの一本松」が笛に生まれ変わり、古里の南相馬市鹿島区に帰還した。同市で2日、笛のコンサートが開かれた。震災後に地域住民に勇気を与えた一本松は優しい音色となり、再び人々の心を癒やした。

 損傷が激しかったため2017年に惜しまれながら伐採された一本松。一本松の一部を譲り受け、笛を作った北海道恵庭市で楽器製造業を営む小野昭一さん(71)が演奏し、地域住民らがゆっくりと聞き入った。

 小野さんは笛の音色を「しっかりとしつつ、深い優しさが入っている」と表現し「かしまの一本松は優しさと力強さ、勇気をくれる。いろんな所でその思いを伝えてほしい」と願った。

 小野さんは震災後、音楽などを通じて東北への支援を続けてきた。17年に一本松が伐採されるとラジオで知った小野さんは、地域住民でつくる「かしまの一本松を守る会」に「一本松の一部を分けてほしい」と依頼し、一部を譲り受けた。

 笛を製造するため乾燥させたり、新型コロナウイルスの影響を受けたりしたため、住民らに披露するまでには長い時間が必要だった。コンサートに足を運んだ双葉町の山根麻衣子さん(48)は「津波や原発事故でなくなるものが多い中、形を変えて残るものがあるのは救い。音を聴き、13年に思いを巡らす静かな時間ができた」と語った。

 コンサート会場の一つとなった南相馬市の同慶寺の住職で、小野さんの活動を支援してきた田中徳雲さん(49)は「皆さんと一緒に笛の音を分かち合うことができ、良い時間だった」と話した。

 かしまの一本松 東日本大震災の津波が襲った南相馬市鹿島区南右田の沿岸部で、多くの木々が倒れたり枯れたりする中で唯一生き残った松。樹齢は約200年とされ、高さは約25メートルあった。地元住民らが2013年に「かしまの一本松を守る会」をつくり、保護活動を展開したが、損傷が激しく17年に伐採された。一本松の一部は、約200枚の表札や楽器の「コカリナ」としても生まれ変わっている。