ファストフード店「ペンギン」復活!双葉交流センターで営業開始

 
「新しいペンギンの出発」と力を込める山本さん(左)と吉田さん=1日、双葉町産業交流センター

 かつて双葉町のJR双葉駅前にあり、双葉高生らの憩いの場として親しまれたファストフード店「ペンギン」が復活し、1日から同町産業交流センターで営業を始めた。母から屋号を受け継いだ同店マネジャーの山本敦子さん(48)は「新しいペンギンの出発。双葉の人がゆっくり立ち寄れて、忙しい現場の人の胃袋を支えられる店にしたい」と意気込む。

 町内で燃料を取り扱う伊達屋が経営するペンギンは1985(昭和60)年ごろから23年間、双葉駅前の同社本店にあった。電車待ちの双葉高生らが集まり、ドーナツやハンバーガーなどを食べて腹を満たした。

 当時、ペンギンを切り盛りしていた山本さんの母吉田岑子(たかこ)さん(76)は「肩もみをすればタダでハンバーガーを食べさせ、高校生の人生相談にも乗った。楽しい毎日だった」と懐かしむ。

 コンビニが台頭する時代の流れを受け、ペンギンはやがて閉店。その後、東日本大震災と原発事故に見舞われた町内では、復興に向けて駅前が再整備され、ペンギンのあった伊達屋本店も解体された。駅舎は新しくなり、駅西側では居住エリアの造成が進む。

 町産業交流センターへのペンギンの出店は、山本さんの弟で同社長の吉田知成さん(44)の提案。吉田さんは「まちの景色が変わると地元の人も双葉に戻った感じがしない。ペンギンのハンバーガーを食べて、一瞬で当時の空気を感じてほしい」と思いを語る。

 その思いに応えたのが山本さん。高校生のころから店を手伝っていたこともあり、「ペンギンをやるのは私しかいない」と決意した。

 ペンギンは同センターのフードコートの一角にあり、営業初日は多くの利用者でにぎわった。「久しぶり」「いまどこに住んでるの」。ペンギンで再会を喜ぶ人たちの姿に、山本さんは忙しい合間にも「胸がぐっときた」と感無量の様子。当時の常連客で、現在は復興の最前線で活躍する若手経営者らの姿もあった。

 ペンギンで働く若手スタッフは、双葉町や南相馬市の出身。店を出すことで、全町避難の続く町に新たな人の営みが生まれた。「まだ町内に住めなくても、若い人が戻ってるということは刺激になる。双葉に携わる人を少しでも増やせれば」と山本さん。ペンギンの新たな役目が見つかった。