「涙が出そう」新地で10年ぶりに競り再開 釣師浜漁港に活気

 
約10年ぶりに再開した新地地方卸売市場で行われた競り=4日午後1時10分ごろ、新地町

 東日本大震災の津波で大きな被害を受けた新地町の釣師浜漁港で4日、新地地方卸売市場が約10年ぶりに再開した。市場が置かれる荷さばき場に魚が並び、仲買人による競りで港に活気が戻った。

 代表者によるあいさつや三本締めの後、午後1時ごろ市場にサイレンが鳴り響き、競りが始まった。同漁港所属の小型船21隻が水揚げしたカレイやサワラ、タコなど約10魚種が並び、仲買人が魚の入った籠に次々と入札の札を入れていった。

 「涙が出るほどうれしかった。10年ぶりの活気だ」。市場再開に奔走してきた相馬双葉漁協新地地区代表の小野重美さん(73)は感極まった様子で競りを見届けた。荷さばき場は町が2018年3月に再建していたが、試験操業中で水揚げ量が少なかったことに加え、新型コロナウイルス感染症などの影響で再開を見合わせていた。

 競り前のあいさつでは、来年4月を移行目標とする本格操業を見据え「浜に活気を取り戻すために再開に至った」と説明。放射性物質トリチウムを含む処理水問題への懸念を示しながらも、関係者に「課題はあるが、力を合わせて乗り越えたい」と訴えた。

 4日は相馬市、新地町の水産関係会社約10社が競りに参加。競り落とした魚を近県や東京・豊洲の市場に運んだ。相馬原釜魚市場買受人協同組合長の佐藤喜成さん(68)は「徐々に震災前の形に戻ってきたことを実感する。漁業者と協力して漁業復興に取り組みたい」と話した。同港での競りは当面、週2~3回程度行われる予定。シラスやコウナゴなど一部魚種はこれまで通り、相馬原釜の市場に集約して競りを行う。
 
 鹿島は来年目標

 相馬双葉漁協によると、管内で震災前に6カ所あった市場のうち相馬原釜、請戸に続き新地の市場で3カ所が再開した。

 南相馬市鹿島区の真野川漁港の市場も、来年4月の再開を目指す考えを示した。