「防災」を重視、半数超 震災10年、福島県59市町村アンケート

 

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後、県内59市町村長の半数超がまちづくりで「防災」を重視するよう変わったことが、福島民友新聞社が実施したアンケートで分かった。2011(平成23)年の新潟・福島豪雨や一昨年の東日本台風(台風19号)、今年2月の最大震度6強を観測した地震など大規模な自然災害が相次ぐ中、市町村は高い防災意識で災害に強いまちづくりを進めている。

 市町村長に震災後、まちづくりを進める上で変化したことについて自由回答で理由とともに尋ねた。30市町村長が震災、原発事故の教訓を踏まえた住民や職員の防災意識の向上、防災・減災の在り方、住民の安全・安心の確保に向けた取り組みの強化などを挙げた。

 矢祭町の佐川正一郎町長は「震災前までは自然災害が少なく、いつしか『災害が少ない=災害に強い』という意識が定着していた」と自省。西会津町の薄友喜町長は「『想定外』を想定することの大切さを学んだ」とし、浅川町の江田文男町長は新型コロナウイルス感染症も踏まえ「震災後、住民を守る対策が急務になっている」とした。

 高齢化率の高い昭和村の舟木幸一村長は「要援護者の避難を支援する体制づくりが求められるようになった」と具体的な変化を指摘。自然災害が大規模、広域化する中、いわき市の清水敏男市長は「防災・減災に努めることはもとより、災害を克服するための回復力や復元力を備えることが重要」と、多発する自然災害を前提としたまちづくりの必要性を訴えた。

 都市計画が専門の川崎興太福島大共生システム理工学類准教授は「防災を要素の一つとして、その地区の特性にあったまちづくりを進めることが重要」と指摘した上で「災害が起きる前にリスクを考え、備えておく『事前復興』の考え方が大切」と語った。

 「人口減」が最大課題

 福島民友新聞社が行った県内59市町村長アンケートで、各市町村が抱える最大の課題について尋ねたところ、40市町村長が「人口減少・少子高齢化」などの人口問題を挙げた。地方が抱える全国的な問題であるものの、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で深刻な課題となっている現状が改めて浮き彫りとなった。

 県の人口推計(2月1日現在)によると、本県の人口は181万9236人で、震災発生前(2011年3月1日)の202万4401人に比べて約20万人減少した。減少率は10%を超え、国全体の減少率約2%を大幅に上回っている。

 このため多くの市町村長は、交流人口の拡大や移住・定住を促進するための施策が不可欠と回答。福島市の木幡浩市長は「新しい復興創生ステージをつくり、人口減少に歯止めをかけることが必要」として自然減の抑制とともに、若年層の定着・流入による社会増への転換を訴えた。

 福島大共生システム理工学類の川崎興太准教授(都市計画)は「復興は人がいてこそ」と指摘する。実際に大熊町の吉田淳町長は最大の課題として「自治体のマンパワー」と回答しており、川崎准教授は震災から10年を経て「これまで以上に移住者を増やすための政策を考えることが必要」と説明。「移住に特効薬はない。それぞれの市町村が総合的な魅力を高めるしかない」としつつ、比較的定着率の高い地域おこし協力隊の積極的な活用などを通した施策展開を提案した。

          ◇

 アンケートは1月下旬~2月中旬に、県内59市町村長を対象に実施した。川俣町は同26日に就任した藤原一二町長の回答。会津美里町については、町長逮捕前に回答を得ていた。