遺族代表・田村さん「最愛の人、忘れず前向く」 福島県追悼式

 
遺族を代表し犠牲者の冥福を祈る田村さん

 県は11日、福島市のとうほう・みんなの文化センターで東日本大震災追悼復興祈念式を行った。新型コロナウイルス感染拡大を受け昨年は参列者を5人に絞ったが、今回は感染防止対策を講じて221人に拡大した。震災と東京電力福島第1原発事故の犠牲者に哀悼の意をささげつつ、復興加速化への誓いを新たにした。

 式典で遺族代表の言葉を述べた田村江久子さん(63)=南相馬市=は両親と夫、次女の4人を津波で亡くした。「最愛の家族を失った遺族の悲しみと悔しさは消えることはなく、この思いを抱えながら前を向いて生きていかなくてはなりません」と、今でも忘れることのない遺族の心情を語った。

 10年という月日で記憶や教訓の風化が懸念される中、田村さんは「災害によって悲しいことが起こらないよう、早め早めの避難が大切だということを伝えていく」と語り、「そのことが亡くなった人たちへの最大の供養になると思う」と言葉を続けた。まだ行方不明の父には「ずっと待っているから、早く家に帰ってきてね」と優しく呼び掛けた。

 式後、取材に応じた田村さんは、10回目の「3・11」について「家族の命日であり、忘れてはいけない日。あの日の朝、『行ってきます』のあいさつでみんなと別れてしまった。まだ話したかった」と振り返る。夫とは結婚50年の節目に一緒に写真を撮ろうと約束していたが、かなわなかった。「元気に上から見守っててもらえたらうれしい」と願った。今は娘と2人暮らし。「少しずつ落ち着いてきている。このまま静かに暮らせたらいいな」と心の内を明かした。