犠牲者の魂の平安祈る 浜通り10市町追悼式、さらなる復興誓う

 
震災と原発事故後、初めて町内で行われた追悼式。遺族らが黙とうをささげた=双葉町

 震災発生から10年。地震や津波、原発事故で被災した浜通りでは追悼式や慰霊祭が行われ、遺族や関係者らが手を合わせ、花をささげるなどして犠牲者の魂の平安を祈った。大熊町と双葉町では震災後初めて町内での式典開催となり、関係者がさらなる復興を誓った。

 【双葉】町産業交流センターで追悼式を行った。町は原発事故によって全町避難が続いており、町内で追悼式を行うのは震災と原発事故後初めて。

 伊沢史朗町長は式辞で、津波の犠牲者や長期の避難生活で力尽きた町民への哀悼の意を示し「多くの町民の力添えをもらいながら、生まれ育った古里双葉への帰還を実現したい」と誓った。遺族ら約60人が献花し、犠牲者の冥福を祈った。

 【大熊】大川原地区の町役場で追悼式を行った。町主催の式典は震災後、避難先の会津若松市などで行ってきたが、町内で実施するのは初めて。

 吉田淳町長ら9人が参列し、献花した。吉田町長は式辞で「数多くの心温まる支援で役場機能の古里帰還を果たした」とこれまでの10年を振り返り、「震災で亡くなった方、帰還がかなわず避難先で亡くなった方の無念を胸に刻み、一日一日を古里復興にささげる」と誓った。

 【富岡】フローラメモリアルホール富岡で慰霊祭を行い、津波の犠牲者24人と震災関連死452人(11日時点)の鎮魂を祈った。

 約20人が参列した。宮本皓一町長が「古里富岡を未来へつなげていくために、安心でより良い町づくりに一層精進する」と誓った。

 【浪江】町地域スポーツセンターで追悼式を行い、約70人が参列して犠牲者の冥福を祈った。吉田数博町長が式辞を述べた後、遺族代表として津波で両親を亡くした川口登さんが「遺族はさまざまな人の思いを次の世代へしっかりと語り継ぐ責務がある」と述べた。

 【楢葉】町コミュニティセンターで追悼式を行った。町民ら約200人が献花し、犠牲者をしのんだ。

 松本幸英町長が「明るい未来が描けるよう震災の教訓を胸に刻み、災害から町民を守り抜く」と式辞を述べた。柴田浩光さんが遺族代表の言葉を述べた。

 【広野】海岸近くの震災記念公園に献花台を設け、津波の犠牲者を追悼した。
 参列した町民らが献花台に花を供え、静かに手を合わせた。遠藤智町長は「亡くなられた人の思いを胸に刻み、災害に強いまちづくりを進める」と追悼の言葉を述べた。

 【南相馬】ゆめはっとで追悼式を行った。門馬和夫市長の式辞の後、遺族を代表して津波で母と祖母が犠牲になった小高産業技術高3年三浦光さん(18)が登壇。「10年たち、やっと母への思いを話すことができた。これからもそばで見守ってください」と語った。

 【相馬】スポーツアリーナそうまで追悼式を行い、立谷秀清市長が式辞を述べた。

 相馬高3年の宍戸ひかりさん(18)が、津波で亡くなった父光一さん=当時(61)=ら親族3人に向け、東北福祉大に進学して養護学校教諭を目指すことを報告。「心に傷を持つ子を支えたい。空から見守っていてほしい」と話した。

 【新地】町文化交流センターで追悼式を行い、遺族ら約100人が参列した。大堀武町長が式辞を述べ、参列者が献花した。

 妹を亡くした鴫原海風(みかぜ)さん(17)は「これから先も震災のことを忘れずに、妹の分まで頑張って生きていきたい」と話した。

 【いわき】市総合体育館で追悼式を行った。妻政子さんを亡くした遺族代表の岡田良平さん(78)が「震災の記憶と経験を伝えることが犠牲になった方の思いに応えること」と追悼の辞を述べた。清水敏男市長が式辞し、書家金沢翔子さんが「飛翔(ひしょう)」と揮毫(きごう)した。