「道の駅なみえ」グランドオープン 古里から再出発!にぎわいを

 
「道の駅なみえ」のグランドオープンを祝い鏡開きをする関係者=20日、浪江町

 浪江町の「道の駅なみえ」は20日、町伝統の味と技が楽しめる地場産品販売施設「なみえの技・なりわい館」が新たに開所し、グランドオープンを迎えた。請戸漁港で揚がった魚をつまみに、大堀相馬焼のおちょこで日本酒「磐城壽(いわきことぶき)」を飲み、浪江を感じてほしい―。古里で事業を再開した関係者は町のにぎわいを取り戻そうと力を尽くす。

 同館には、原発事故で避難した鈴木酒造店と大堀相馬焼協同組合が入った。いずれも古里での事業再開は10年ぶりだ。

 「浪江には農業や漁業など豊かな暮らしがあった。人々の暮らしぶりを酒造りを通じ、ここから発信したい」。鈴木酒造店の社長兼杜氏(とうじ)の鈴木大介さん(47)は力強く語った。

 同社は震災までの約180年、漁業で栄えた請戸地区に酒蔵を構えていたが、震災の津波で流失。多くの支援を受けて山形県長井市で酒造りを続け、今回、古里で一部事業を再開した。同館の開所に合わせて、町産のコメと水を使った記念醸造酒約1500本を限定発売した。銘柄は思いを込めて「ただいま」と名付けた。

 「300年の伝統の火を次世代につなげる拠点にしたい」。町の伝統工芸品「大堀相馬焼」の窯元で組織する大堀相馬焼協同組合理事長の小野田利治さん(59)は、古里での新たな挑戦に心を燃やす。

 産地の大堀地区は今も原発事故による帰還困難区域だ。各窯元は県内外の避難先で作陶を再開しているが、「いつか浪江で復活を」との思いを持ち続けてきた。

 施設では九つの窯元が作品の展示販売や来場者の陶芸体験を行う。

 小野田さんは「多くの来場者に相馬焼を楽しんでもらえるよう、さまざまな企画を進めていく」と前を見据えた。

 吉田浪江町長「次世代につなぐため

 道の駅なみえのグランドオープンを祝う記念式典が現地で行われた。吉田数博浪江町長は「先人が守ってきた古里を復興し、次世代につなぐため、地域ににぎわいを取り戻す光になってほしい」と道の駅への期待を語った。

 町は原発事故で全町民約2万1500人が避難。2017(平成29)年3月末、町中心部など一部地域で避難指示が解除された一方、帰還困難区域は今も町土の8割を占める。町によると、2月末現在の町内居住者数は1596人で、震災前の1割未満となっている。