女性の声、防災計画に 委員、男性ばかり「日本の問題」

 

 各自治体が防災計画策定のために設置する地方防災会議について、国は2025年度までに女性委員の割合を30%にすることを目標としている。災害対策に女性の視点を反映させることが目的だが、県内の女性委員の割合は高まっておらず、道のりは遠い。そんな中、楢葉町では、課題を抱えながらも工夫して防災計画に女性の意見を取り入れている。

 地方防災会議の委員になるのは防災関係組織の代表者や行政の各部署の管理職。市民団体や学識経験者が入ることもできる。しかし、委員の職指定(いわゆる「充て職」)があること、指定される職(組織の長など)に女性が少ないことから、全国的に男性が多い傾向にある。

 楢葉町の委員は36人中女性が2人(11月1日時点)。「昨年度の町防災計画改定の際には女性委員を増やそうと考えていました」と、町くらし安全対策課の宇佐見元子課長(57)は話す。しかし、町防災会議は計画案が出来上がってから開かれる仕組み。このため「強引に女性を入れても、その段階では意見を反映しきれない」と考えを切り替え、計画を作る前の昨年9月に防災座談会を開いて町民女性の声を聴いた。

 参加したのは昨年発足したばかりの女性だけの消防団第8分団の代表、高齢者施設の施設長、民生委員、文化団体代表の女性たち。障害者や認知症の人の避難や、女性に配慮した避難所設営、家庭で日常的に使う食材などを少し多めに備蓄するローリングストック推進の必要性、生理用品やアレルギー対応の拡充、ペット避難など、多彩な意見が出た。

 町は指摘を受けて福祉避難所を2カ所増やしたほか、広報誌で備蓄を繰り返し呼びかけるなど、その意見を防災計画や施策に反映した。計画策定後も防災出前講座を開き、女性の声を集めている。

 女性委員の増員は課題として残る。宇佐見課長は「防災会議の運用の仕方も含めて、今後検討すべきだと考えている」とした。

 減災と男女共同参画研修推進センター共同代表で県内でも防災講話を行っている浅野幸子さんは「充て職」で付く委員に男性が多いことを「日本全体の問題」と指摘する。女性委員の30%達成には「役職にかかわらず女性管理職を委員に出すよう促す、市民団体枠や学識者枠を増やすなど、工夫して比率を上げることも可能」と先進自治体を例に対応策を挙げた。

 福島県の割合は全国45位

 内閣府が5月に発表した調査(21年末時点)では、防災会議を設置している県内52市町村全てが30%に達せず、女性委員がいない市町村が21あった。ジェンダー研究に取り組む上智大の三浦まり教授らでつくる「地域からジェンダー平等研究会」が3月に発表した「都道府県版男女格差(ジェンダー・ギャップ)指数」によると、本県の市町村防災会議の女性の割合は全国45位と低い。

 東日本大震災では避難所に女性用トイレや着替え場所、物干し場、授乳スペースがないなど、女性が我慢を強いられる生活を余儀なくされた。男女で異なるニーズに配慮した災害対応が求められている。