「Frederick」(フレデリック) ―vol.08
今年、最初にご紹介する英語絵本は、野ねずみが主人公のおはなし。アメリカの絵本作家レオ・レオニによる『Frederick(フレデリック)』です。
牧場の古い石垣に住んでいる5匹の野ねずみたち。4匹の野ねずみたちは、間近に迫る冬に備え、木の実などの食料を集めるために、昼も夜もせっせと働きます。けれどもフレデリックだけは別で、じっとして動かないのです。
一生懸命働いている野ねずみたちは、どうしてフレデリックは働かないのかと尋ねます。すると、寒くて暗い冬に備えおひさまの光を集めたり、灰色の冬に備え色を集めたり、長い冬に備え話が尽きないようにことばを集めている、と言うのでした。
やがて、雪の降る寒い冬になり食べ物も尽き、4匹の野ねずみたちはフレデリックに尋ねます。
「What about your supplies, Frederick?」
(きみが あつめた ものは、いったい どう なったんだい、フレデリック。)
するとフレデリックは答えます。
「Now I send you the rays of the sun.
(きみたちに おひさまを あげよう。)
「Do you feel how their golden glow...」
(ほら かんじるだろ、もえるような きんいろの ひかり...)
と、今まで集めていた光や色、ことばについて披露し、寒さで凍えそうな野ねずみたちの心を救い温めるのでした。
怠けているように見えたフレデリックでしたが、心を満たすものを集めていたのです。
状況が困難なときこそ、ことばや芸術は大切な役割を果たします。レオニが偶然出会った野ねずみに、自身の芸術という仕事の意味を見出したことで、この作品ができあがったそうです。自分の価値を感じること、子どもが自己肯定感を持つことは大切です。この絵本はそれを語ってくれています。
日本語は故市原悦子さんが担当。温かさとともに、説得力があり、フレデリックの詩のようなことばの一つ一つが、心に染みます。ぜひ原作の英語と日本語の両方をお楽しみください。
ラボ・パーティ講師 佐藤暁子 福島市出身、在住。絵本を通して英語力・社会力・コミュニケーション力を育てる「ラボ・パーティ」(本部・東京)の教室「ラボ佐藤パーティ」を2001年開講。趣味は舞台鑑賞。ラボ国際交流ボランティアリーダー。県内にラボ・パーティは17カ所あります。
2022年1月号・Me&Youより
- 「CHOO CHOO THE STORY OF A LITTLE ENGINE WHO RAN AWAY」(いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう) ―vol.22(最終回)
- 「The Vixen Who Found a Bark Sandal」( わらじをひろったきつね) ―vol.21
- 「GUESS HOW MUCH I LOVE YOU」(どんなにきみがすきだかあててごらん) ―vol.20
- 「Olle's Ski Trip」(ウッレと冬の森) ―vol.19
- JUGEM(じゅげむ)From Rakugo―vol.18
- PETUNIA(がちょうのペチューニア)―vol.17
- MOMOTARO The Boy Born from a Peach(ももたろう)―vol.16
- 「The Story Of The Three Little Pigs」(3びきのコブタ)―vol.15
- 「London Bridge Is Falling Down!」(ロンドン橋が おっこちる!) ―vol.14
- 「Over in the MEADOW」(おおきな のはら) ―vol.13