「THE MITTEN」(てぶくろ) ―vol.09

 
作・絵:エヴゲーニー・M・ラチョフ 英語訳:松居スーザン 日本語訳:内田莉莎子 吹込:天地総子 リーン・ケイン ラボ教育センター(ラボ出版) 価格:2,420円

 立春が近いとはいえ、まだまだ寒い日が続きます。今月は冬に読みたい絵本、ウクライナ民話の『THE MITTEN(てぶくろ)』を紹介します。

 おじいさんがこいぬと雪深い森の中を歩いているうちに、片方落としてしまったてぶくろ。そこへ、くいしんぼねずみがやってきて、てぶくろにもぐりこんで暮らし始めます。すると、ぴょんぴょんがえる、はやあしうさぎ、おしゃれぎつね、はいいろおおかみ、きばもちいのしし、のっそりぐまも次々とやってきて、てぶくろに住み始めます。

 みんな入口では、 「Who is living in this mitten?」

 (だれ、てぶくろに すんでいるのは?) とたずね、

 「Let me in, too.」 (わたしも いれて)

 とお願いします。動物たちの問答が、同じ英語表現でくり返されるので、自然と子どもの耳にも残ります。

 住人がどんどんふえて、最後にのっそりぐまがやってきた時には、てぶくろはすでに満員状態。

 「Absolutely not! The house is full!」

 (とんでもない。まんいんです)

  とみんなに断られますが、無理やり端の方に入って、てぶくろは今にもはじけそうに。森を歩いていたおじいさんがてぶくろを探しに戻ってきますが、てぶくろはどうなってしまうのでしょう。

 愛らしい名前の動物たちは、それぞれの個性が引き立つウクライナの民族衣装を身にまとい、魅力たっぷりに登場。また、ページをめくるたびに、てぶくろは高床式になっていたり、玄関や煙突、窓が加えられたり、どんどん変化していきます。部屋の中はどうなっているのだろうと想像をかきたてられます。

 小さなてぶくろに入るはずもない動物がどんどん入っていくストーリーを、子どもはワクワクドキドキし、結末がわかっていても何度もくり返し楽しみたくなるのです。

 ロシアの絵本作家ラチョフによる、細部までこだわりのあるイラストにも引き込まれ、心はポカポカに。私のお気に入りの動物はおしゃれぎつね。ぜひ、絵本をめくり、ご覧になってください。

 ラボ・パーティ講師 佐藤暁子 福島市出身、在住。絵本を通して英語力・社会力・コミュニケーション力を育てる「ラボ・パーティ」(本部・東京)の教室「ラボ佐藤パーティ」を2001年開講。趣味は舞台鑑賞。ラボ国際交流ボランティアリーダー。県内にラボ・パーティは17カ所あります。

2022年2月号・Me&Youより