「A Midsummer Night's Dream」(夏の夜の夢) ―vol.12

 
作:ウィリアム・シェイクスピア 日本語:河合祥一郎 絵:蟹江杏 吹込:文学座 マイケル・リース リン・ホブディほか 音楽:長生淳 ラボ教育センター(ラボ出版) 価格:3,080円

 花盛りの季節にお届けするお話は、ウィリアム・シェイクスピアの『A Midsummer Night's Dream(夏の夜の夢)』です。420年以上も前に書かれ、映画や舞台を通じて人気の作品です。Midsummerとは夏至のことで、物語は五月祭の前夜の4月末のできごとです。ヨーロッパでは夏至のころに、妖精の力が強まるという言い伝えがあり、夏至の前のドタバタ劇というところでしょうか。

 舞台はギリシャのアテネ近郊の森の中。妖精の王の命令により妖精パックは、目が覚めると最初に目にした相手にほれてしまうというLove‐in‐idleness(恋の三色スミレ)の汁をまぶたに垂らします。けれども指示されたのとは違う人に垂らしてしまったから、さあたいへん! 4人の若い男女や、劇の練習にやってきた職人たちを巻き込んで大混乱、まさかの展開に! 最後はハッピーエンドとなりますが、夏至の前夜に起こったとんでもないできごとは、夢だったのか?

Over hill, over dale,
Thorough bush, thorough briar,
Over park, over pale,
Thorough flood, thorough fire,

丘を越えて、谷越えて、
いばらをくぐって、やぶ抜けて、
かこいを越えて、さく越えて、
水をくぐって、火を抜けて、

 太字の部分を強く読むと、英語らしいリズムで読めます。シェイクスピア作品というと難しく考えられがちですが、この韻をふんだ英語のリズムが心地よく、子どもたちはそのリズムを楽しむかのように、英語を口にすることができます。

 日本語は、今まさに気鋭の河合祥一郎氏が日本語にも韻を踏むようにした訳となっていて、英語も日本語も声にして読みたくなる作品です。また版画家の蟹江杏(かにえ・あんず)氏の、色鮮やかな遊び心のある挿絵に、幼い子どもでも夢中になります。

 原作の縮小版ですが、ことばの魔術師シェイクスピアが紡いだ英語を、たっぷりと味わいながら、みなさんも、アテネの森でのドタバタ劇に巻き込まれてみませんか?

 ラボ・パーティ講師 佐藤暁子 福島市出身、在住。絵本を通して英語力・社会力・コミュニケーション力を育てる「ラボ・パーティ」(本部・東京)の教室「ラボ佐藤パーティ」を2001年開講。趣味は舞台鑑賞。ラボ国際交流ボランティアリーダー。県内にラボ・パーティは17カ所あります。

2022年5月号・Me&Youより