政策、平和を考える材料に 大分でNIE全国大会

 
作成した平和新聞と「平和の誓い」の記事を読み比べる児童ら

 教育に新聞を活用する「NIE(教育に新聞を)」活動について、教育、新聞関係者らが情報交換する第21回NIE全国大会(日本新聞協会主催)が4、5の両日、大分市で開かれた。テーマは「新聞でわくわく 社会と向き合うNIE」。全国から約1400人が集まり、講演や討論、分科会を通して新聞を教育に生かす意義や有効な活用法を探った。その模様を詳しくリポートする。

 高校分科会

 大分舞鶴高(大分市)の2年生がスーパーサイエンスハイスクール(SSH)探究講座「国語」の公開授業を行い、生徒らが新聞を活用しながら大分県をより良くする政策を考えた。

 生徒らは事前に班に分かれ、新聞で大分県の現状や県内外のニュースを調べ、政策を考案。公開授業で発表した。体験ツアーや支援で農業を促進する政策や、観光に力を入れたり、全国的に知られた企業と連携した事業を行ったりすることなど、アイデアは多岐にわたった。

 少子高齢化を課題に挙げた班は、若者が地元で農業ができるよう、土地や資金を支援する政策を提案。人気グループTOKIOが本県産農産物のイメージアップに貢献し、内堀雅雄知事から感謝状を受けた新聞記事を紹介し、有名芸能人を起用して政策をPRするアイデアを発表した。

 発表後、生徒らは政策について意見交換した。新聞記事の事例を参考に、地域について同じ課題を挙げた班の政策を合わせたり、他班のアイデアを取り入れたりするなど、考えを深めた。

 小学校分科会

 舞鶴小(大分市)の6年生が総合的な学習の時間の公開授業を行った。

 児童らは、5月の修学旅行で長崎市を訪問。その後原爆や被害などについて調べ「平和新聞」を作成した。公開授業では、平和新聞と昨年広島でスピーチされた「平和への誓い」が掲載された新聞とを読み比べ、平和のために自らができることについて考えた。

 「スピーチにはなく、平和新聞の編集後記ではたくさん使われている言葉は何でしょう」。担当教諭が問い掛けると、児童らが熱心に記事を読み比べる。すると、その言葉は「戦争」であることが分かった。

 平和新聞の編集後記には「戦争をしてはいけない」という記述が多かったが、スピーチには自分たちが平和のためにできることについて触れられている。児童は、スピーチの中にある「小さな平和」とは何か、グループで話し合った。

 担当教諭は「平和への思いを未来につなぐことが大切。今年スピーチする子はみんなの同級生。新聞にどんな記事が出るかにも注目してほしい」と呼び掛けた。

 特別分科会

 主権者教育と新聞との関わりについて、滋賀県と大分県の高校や地元紙が報告した。

 日田高(大分県日田市)の賀来宏基教諭は、模擬選挙を通じた主権者教育の在り方を報告。投票に至る過程で自分の考えを整理して人の意見を聞いたり、意見を表明することを習慣づけたりする重要性を感じたといい、「主権者教育をはやりではなく、日常化していくべきだ」と述べた。

 大分合同新聞の首藤康編集委員は、今夏の参院選について同県内で抽出された10代の投票率(推計)を例示し「投票率が低い。主権者教育が機能したかどうか、マスコミや教育機関で考えていく必要がある」と指摘した。一方、同紙は「体験型の教育を通じて市民意識を培う」ことを目的に、大分大と連携して授業を実施。学生が地域の現場に足を運んで課題を考え、紙面で紹介する取り組みを紹介した。

 10代の投票率に関し、賀来教諭は主権者教育を学校のカリキュラムにするよう提案。彦根東高(滋賀県彦根市)の藤村知行教諭は小中学校からの主権者教育の重要性を訴えた。

 エヌ・アイ・イー 「Newspaper in Education」の略で、学校などで新聞を教材として活用すること。新聞や新聞記者について学ぶ、新聞づくりを通して学ぶことも含まれる。福島民友新聞社などが加盟する日本新聞協会を中心に、全国47都道府県に教育界、新聞界の代表で構成されるNIE推進協議会が設立され、地域のNIE活動の核となっている。