興味の的スクラップを 元教諭・鹿野川さんが実践法

 
かのがわ・きよみ 東京都内の中学校で35年間国語の教諭を務めた。日本新聞協会指定のNIEパイロット授業を実施。東京都教育功労賞受賞。退職後もNIEの教員研修の講師や出前授業などで全国を駆け回る。

 新聞を読む子どもは成績が良い―。文部科学省や県教委の調査でも傾向が示された新聞の効果だが、実際の授業や家庭学習にどう取り入れたらいいか分からない―という声が教育現場にある。教壇に長年立って新聞の活用を実践してきたNIE企画デザイナー鹿野川喜代美さん(東京都)にこつを聞いた。(聞き手・編集局次長 小野広司)

 ―授業に新聞を使いだしたのは、なぜ?

 「教員になって、どうしたら学ぶ意欲を引き出せるか考えました。生徒に求めたのが新聞のスクラップ。『やりたい時にやりなさい。取っておきたい記事を切って大学ノートに貼る。写し書きしてもいいし、感想を書いてもいいよ』と。ノートには毎日、目を通してサインしてあげると子どもは喜ぶ。一緒に感想を書くお母さんもいた。すてきでしょ。3年間続けたら成果が出た。高校入試では全員合格して進路が決まった。校長先生も『面接の答え方がすばらしい。今までと全く違う』と認めてくれた」

 ―生徒の反応は。

 「斜に構えていた生徒でも、高校の弁論大会で優勝した時には『先生の言っていた意味が分かった』と言ってくれました」

 ―授業に新聞をどう使うか、分からない先生が多いと聞きます。

 「先生も忙しいので新聞をじっくり深く読む暇がありません。どのタイミングでどう使ったらいいか、難しく感じていると思います。一方で子どもたちは毎晩スマホで目は疲れ、深みにはまっていくようで、恐ろしい。上辺だけの情報は広く浅い。新聞は上質。どんどん読ませるべきです」

 ―具体的な活用法は。

 「例えば記事やコラムに書いてあることを調べさせる。感想を書く。テレビ欄から好きな番組の見どころを書かせて壁に張り出すと、同じ番組が好きな子と理解しあえる。メッセージ広告などを基に小論文を書く。どれもポイントを押さえて書くことが大切ですね」

 ―保護者にも新聞を活用してほしい。

 「新聞を読む子どもは話題が豊富で、テレビニュースの時間に子どもが家族だんらんの主役になる。親も賢くなる。新聞には子どもの興味を引く記事がころがっていて、自分で記事を見つけたら食いつく。『どうして?』『なぜ?』が書いてあるので社会に関心が深まり、学ぶ意欲が湧く。親と子どもの言葉が通じるうちに手間暇掛けて一緒に勉強すれば、底力がつきますよ」

 本社で親子新聞教室

 福島民友新聞社は、鹿野川喜代美さんを講師に迎えた「夏休み親子新聞教室」を29日(土)と8月19日(土)の2回、福島市の本社で開催します。問い合わせは販売局「まなぶん事務局」(電話024・523・1472、平日午前10時~午後5時)へ。