正しい情報選ぶ力養う 11月はNIE月間、学習教材に新聞活用

 
新聞記事をスクラップする図書委員会のメンバー=半田醸芳小(写真上)文化祭で発表する八巻さん=北信中(写真中央)本紙から関心のある記事を探す生徒たち=喜多方桐桜高(写真下)

 学習教材に新聞を活用したNIE(Newspaper in Education=「エヌ・アイ・イー」)活動は教育界と全国の新聞社、通信社が協力して展開している。NIE活動は、地域や社会の中で課題を見つけ、解決のために行動する力を育むことが目的。膨大な情報が行き交うインターネット社会へと日々進む中で、正しい情報を取捨選択し、読み解く情報活用力も現代の子どもたちには求められている。県内の教育現場でも年々活動の輪が広がっており、積極的に取り組む小学校、中学校、高校の実践件数は増加している。福島民友新聞社はNIE支援活動として各校の要望に応えた出前授業を実施している。出前授業の様子と2022年度日本新聞協会が認定するNIE実践校の取り組みを取材した。

 記事にクイズ加え交流

 【桑折・半田醸芳小】2021、22年度の日本新聞協会NIE実践指定校に認定されている桑折町の半田醸芳小(五十嵐洋之校長)は、地域をはじめとした社会の出来事を新聞から読み解き、関心を深めることを目的としたNIE活動に昨年から取り組んでいる。

 図書委員会が新聞を読み気になる記事をスクラップ、クイズを添えて図書コーナーに掲示する。以前はスクラップした記事を読んだ児童が自分の意見を書き込んでいたが、低学年も参加できるようクイズ形式に変更した。

 図書委員会の松原彩奈(あやな)さん(6年)は「見出しを大きく作って内容を分かりやすくしている」と誰にでも記事の内容を理解できるよう工夫を凝らしている。図書委員会を担当する小川真季教諭は「新聞の読み方を学び、児童が新聞を手に取るようになった」と手応えを感じている。

 また高学年では新聞記事をスクラップし、自分の意見を添えて発表する時間を設けている。全学年を対象に、身近な出来事をテーマに新聞を制作し、表現力を養う活動も行っている。

 五十嵐校長は「子どもたちの興味の対象はさまざま。幅広い情報を提供する新聞を活用し、社会性を高め地域社会に目を向け、地域愛を育てるきっかけとなってほしい」と話す。

 図書委員会が作成するクイズに参加する子どもたちが行き交う図書コーナーは、子どもたちが新聞に触れ、読解力と社会性を育む場となっている。

 詳しく調べ伝える側に

 【福島・北信中】福島市の北信中(千葉英一校長)は、NIE活動の一環として、生徒による新聞を活用した発表で「読む力」「考える力」の向上に力を注いでいる。

 「新聞てきぱきプレゼン」と題したNIE活動は、生徒が新聞を読み注目した記事をピックアップ、記事をはじめさまざまな情報媒体でその内容を調べ、プレゼンテーションする。

 文部科学省が進めるGIGAスクール構想により全生徒に配布されたタブレットも活用しながら視覚にも訴えるプレゼン資料を作成し、発表に臨む。読解力、情報収集力に加え、聞く人を引きつける表現力も必要となる。

 千葉校長は「印刷された文章には行間に隠された書き手の思いやページをめくる期待感など独特の文化がある。紙から得る情報は理解が深まり、デジタル化が進む現代社会でも必要な媒体と感じている。一方で、デジタルによる情報収集の多様化は今後も進んでいくだろう。これからは紙媒体とデジタルの共存が課題」とこれからのNIEについて方向性を示した。

 10月に開かれた文化祭では「新聞てきぱきプレゼン」に取り組んだ生徒から八巻美海(みう)さん(1年)をはじめ3人を選抜し、ステージ上で発表を行った。八巻さんは「以前から興味があった宇宙や地球の起源について、小惑星りゅうぐうの新聞記事をきっかけに資料を作成した。発表を聞いた人が興味を持つきっかけになればうれしい」と情報共有の重要性について理解を深めた。

 自分の1票大切さ実感

 【喜多方桐桜高】喜多方市の喜多方桐桜高(山内義美校長)は毎年、3年生を対象に社会科の授業の一環で主権者教育を行っており、福島民友新聞社のNIE支援活動の出前授業「ハローみんゆう教育応援プロジェクト・まなぶん」を利用している。今年で3回目。
 今年は10月30日投開票の知事選を前に10月20日に行い、選挙で投票することの意味を考えた。3年生129人が参加した。
 出前授業の講師を務める民友社員は、18歳になり選挙権を有する生徒に対して知事選に投票するかを質問。冒頭では生徒の3割程度が「投票する」との答えにとどまったが、授業後にはほぼ全員が「投票する」との回答に前進した。
 授業は、日常では新聞に目を通さない生徒が多いことから全員に新聞を配布し、約5分間の閲読からスタートする。講師は、社会問題を自分で考え、判断していくには正しい情報を得ることが大切とし「新聞を読む習慣をつけることが近道になる」とアドバイスした。また福島民友の社説を通して、19歳になると投票率が下がるとされる「19歳の壁」の背景を説明した。
 生徒たちは、選挙に関するクイズに挑戦したり、新聞の社会的役割を学んだりした。参加した佐藤虎弥(こうや)さんは「私たちの将来の生活を良くするために若い世代の1票が大切なことが分かった。正しい判断をするために積極的に新聞を読んでいきたい」と話した。

 推進協議会が活動支援

 県内の新聞社、通信社、行政機関で組織する県NIE推進協議会は、新聞を活用した教育(NIE)を推進し、教育現場でさまざまな支援をしている。

 県内小中高校からNIEを積極的に進める「NIE実践指定校」12校の公募や、指定校への新聞提供、関連講演会への参加や実践校の活動報告書を県内学校に寄贈するなどの情報共有により、NIEへの理解と普及を目的とした活動を進めている。

 新聞を読むことでの読解力や思考力、情報を整理して伝える表現力などの向上に効果があるとされるNIE。さまざまな情報収集方法が混在する現代社会の教育現場では、正しい情報を得て理解し活用することが求められ、NIEの果たす役割も高まっている。

 県NIE推進協議会は、活用事業への要望、相談に応じている。問い合わせは事務局(福島民友新聞社販売局・電話024・523・1472)へ。

 地元の話題簡単検索 みんゆうデジタルアーカイブ

 タブレットやパソコンの通信環境が整っていれば、過去の新聞から記事を探し出して学習できるようになりました。福島民友新聞社は教育現場や企業などに「みんゆうデジタルアーカイブ」を提案しています。

 福島民友の強みは、地元の情報がたくさん詰まっていること。「ふるさと」を調べて学ぶ取り組みが各校で盛んに行われています。「みんゆうデジタルアーカイブ」の契約をすると、震災や持続可能な開発目標(SDGs)、環境問題、ボランティアなど若い人の関心が高い記事をキーワードや掲載日から検索し、新聞をそのまま表示したり、記事を切り取って「お気に入り」に保存したりできます。見つけた記事をみんなで持ち寄って話し合うと、ニュースの違った読み方にも気付いて理解が深まるでしょう。

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