新聞活用で伸びる「読む力、伝える力」 NIE実践校で効果実感

 
気になる記事を切り抜く児童=2022年12月16日、高瀬小

 新聞を教育に取り入れる「NIE(エヌ・アイ・イー、Newspaper in Education=ニュースペーパー・イン・エデュケーション)」の取り組みが、県内各地の学校などで進められている。子どもの読解力や考える力の向上につながることから、教育現場ではさまざまな工夫が凝らされている。

 郡山・高瀬小 気になる記事、友達に紹介 

 「私はウクライナの子どもが水を運ぶ記事を選びました」。昨年12月16日、郡山市の高瀬小で、5年生の児童約20人が気になる新聞記事を切り抜いてシートに貼り、友達に紹介する授業に臨んでいた。

 浜津さくらさん(11)は戦時下にあるウクライナの子どもが、バケツを使って給水トラックから水を運ぶ記事を紹介。「私たちは蛇口をひねれば安全な水がいつでも飲めるけど、記事を見て、当たり前にある水の大切さを感じた」と浜津さん。進行役を務めた教頭の斎藤敬一さん(51)は「新聞を活用することで、子どもたちの活字を読む力や伝える力が伸びてきている」とNIEの効果を実感する。

 高瀬小がNIEに取り組み始めたのは昨年度。斎藤さんが中心となり、先に始めていた高瀬中(郡山市)の教員とも情報交換しながら、教育現場での新聞の活用を進めてきた。高瀬小は昨年度と本年度のNIE実践指定校にも選ばれている。

 最初は手探りで始まった取り組みだが徐々に活用の幅を広げ、現在は全校児童約240人が総合的な学習のほか国語や社会、理科など多彩な教科で新聞を活用している。

 具体的には、国語の授業で全国紙と地方紙の違いを比較したり、社会の授業で伝統工芸を取り上げた新聞記事を読んだりといった内容だ。授業では過去の新聞記事をデータベースで検索するため、タブレット端末も利用する。

 斎藤さんはNIEの取り組みの中で、特に福島民友新聞など地元紙を活用する利点を指摘する。「地元紙しか載らない記事もあり、友達の名前が載ることもある。子どもたちが身近な情報に触れることで、新聞に親しむ貴重な機会になっている」

 授業での活用に加え、図書室にはNIEコーナーを設け、児童がさまざまな新聞を手に取れる環境を整えている。壁には「気になるニュース」として子ども新聞が貼られ、児童たちの注目度も高い。新聞で活字に親しむことで、児童の読書量が増えるなど相乗効果もあるという。

 NIEについて「インターネットでも情報は得られるが、読む力など紙媒体だからこそ児童が得られるものがあると感じている」と斎藤さん。「児童が新聞に親しめるような場面を増やしていきたい」と今後を見据える。

230105nie702.jpg※写真=NIEコーナーを紹介する斎藤さん

 本紙記者、出前講座で解説

 福島民友新聞社は教育現場と連携し、各地で「ハローみんゆう教育応援プロジェクト まなぶん」と題したNIE活動を積極的に推進している。

 情報を正しく読み解く力の重要性が指摘される中、新聞に触れることで読解力や表現力などを身に付けてもらおうと企画。本紙記者が学校を訪れ、福島民友の紙面を使い時事問題や新聞の読み方について解説している。

 昨年9月に田村市都路町の都路中で行われた講座では、紙面のレイアウトを担う編成担当者が仕事内容を紹介。「100行の文章より1行の見出しが心に残る」と、表現力の重要性を伝えた。生徒たちも見出しを考えることに挑戦した。

 学法石川高では、生徒が主権者としての在り方や情報収集の進め方などについて考えた。19歳になると投票率が下がる「19歳の壁」について講師が説明。新聞などを活用して正確な情報を集め、判断力を高める必要性を説き「選挙に行く習慣を身に付けてほしい」と語りかけた。生徒たちは、本紙を読んで関心のある記事を探したり、新聞が作られる過程を学んだりもした。

 講座の申し込み、問い合わせは福島民友新聞社販売局「まなぶん事務局」(電話024・523・1472、平日午前10時~午後5時)へ。

230105nie703.jpg※写真=新聞の伝え方について学ぶ生徒ら=2022年9月、都路中

230105nie704.jpg※写真=福島民友新聞から関心のある記事を探す生徒=2022年9月、学法石川高

 過去記事や紙面検索 「デジタルアーカイブ」提供

 福島民友新聞社は、定額制のウェブ縮刷版サービス「みんゆうデジタルアーカイブ」を提供している。インターネット環境があれば、パソコンやタブレット、スマートフォンで過去の紙面や記事を検索できる。教育現場でICT(情報通信技術)環境の整備が進む中、地域の身近なニュースを授業や教材づくりに活用できる。

 問い合わせは事務局(電話024・523・1459、平日午前10時~午後5時)へ。