活字取り入れ脳を活性化 東北大・川島隆太氏、デジタル偏重に警鐘

 
講演する川島さん(写真上)とたかまつさん

 福島民友新聞社は23日、新聞を活用して活字文化を考える教育事業「読む力、考える力」を福島市で行った。「脳力」を鍛えるパズル・ドリル関連書籍を監修し、「脳トレ」ブームを起こした東北大加齢医学研究所の川島隆太所長が講演し、脳に関する研究データを基に活字を読むことの重要性を強調。「スマートフォンの長時間の使用は子どもの睡眠や身体機能などに悪影響を及ぼす」と述べ、デジタル社会に警鐘を鳴らした。

 川島氏は「脳を育み、脳を鍛え、脳を守る~文字・活字の有用性、デジタルの危険性」と題して講演。動画の学習番組を例に挙げ、動画を見ている時、脳は睡眠状態と同じであると指摘し、「学習内容を自分のものにするには(活字を生活に取り入れて)『思考の脳』を働かせなくてはならない」と述べた。

 全国各地の学校や企業で、社会問題を分かりやすく若者に伝えている笑下村塾(しょうかそんじゅく)のたかまつなな代表取締役による「笑って学ぶSDGs」をテーマにした出張講座も開かれた。

 「読む力、考える力」は一般社団法人・授業目的公衆送信補償金等管理協会の共通目的基金の助成を受けた。市民約420人が来場した。

 川島さん、脳の働き解説

 福島市のキョウワグループ・テルサホールで23日開かれた教育事業「読む力、考える力」。講演した川島所長は、脳研究のデータを示しながら活字を読むときとスマートフォンなどのデジタル機器を使うときの脳の働き方の違いを解説、活字を読むことの大切さを伝えた。

 川島さんは新聞を読む人の脳活動のデータを見ると、脳のさまざまな場所が同時に働き出すと説明。「活字を読んで脳を使うことによって創造力を伸ばすことができ、脳の発達につながっていく」と述べた。一方で、デジタル機器では脳の働きが弱くなるとし、電子書籍や動画の学習番組などを見ると集中力や共感性の低下につながるとした。

 授業でのタブレット端末の利用など情報通信技術(ICT)の導入率が高まる学校教育を取り上げ「変化が著しい脆弱(ぜいじゃく)な子どもたちの脳への影響は大きい。活字の力を利用して子どもたちのさまざまな不具合を調整していくべきだ」と語った。

 来場した会津学鳳中3年の遠藤優花さん(15)は「スマホが学力に与える影響が大きいことに驚いた。使い方に気を付けたい」と話した。

 たかまつななさん、SDGsの基礎知識伝える

 出張講座「笑って学ぶSDGs」では、たかまつ代表取締役が持続可能な開発目標(SDGs)の基礎知識を来場者に伝えた。聞き手としてお笑い芸人のぺんぎんナッツが登場した。

 たかまつさんは生活や医療などSDGsの具体例を説明。貧しい人にお金を渡すのは「短期的な支援」であり、仕事を紹介して自分で稼げる環境を整備することがSDGsの17の目標のうちの一つ「貧困をなくそう」につながると述べた。

 2022年に発表された世界各国のSDGs達成度ランキングで日本は163カ国中19位と上位だった。ただ、ジェンダー平等や気候変動などの目標の達成度は低く、たかまつさんは課題があると指摘。「新聞などで学びを深め、できることから行動に移すことが大切」と呼びかけた。

 来場者は遊びを取り入れた「SDGsババぬきカードゲーム」に挑戦、楽しみながら理解を深めた。

 新聞の読み方、パネルで紹介

 会場一角に設けた新聞活用コーナーでは、新聞の読み方や見出しの付け方などをパネルで紹介した。

 見出しの付け方では、見出しの多くが11字以内であることなど読みやすい工夫を凝らしていることを紹介。同じ記事であっても福島民友新聞(本紙)と全国紙を見比べると、見出しが異なることを説明した。

 持続可能な開発目標(SDGs)と新聞との関わりにも触れ、SDGsを理解するために工夫されたスクラップノートや付箋を来場者にプレゼント。23日付の本紙や子ども向けの「みんゆうジュニア情報局」の特別版も並べ、来場者が新聞に親しんだ。