「タヌキのきょうしつ」 人間に化け夜の教室に

 
あかね書房 1210円

 明治の初め、広島市の小学校での出来事です。校庭のクロガネモチの木の根元に、タヌキの一家がすんでいました。父さんタヌキは、これからはタヌキにも教育が必要と考え、人間に化けて1年生の教室にもぐり込(こ)み、勉強し始めました。そして毎晩(まいばん)、夜の教室では自分が先生となり、子ダヌキたちに読み書きを教えたのです。子ダヌキは、アイウエオや九九を習い覚えることに夢中(むちゅう)になります。

 ところが、夜のタヌキの教室のことは人々の間で評判(ひょうばん)になり、見物客が押(お)しかけ、とうとう教室は閉(し)めることに...。その後何十年もの間に、日本の国は何度も大きな戦争をし、昭和20年8月に広島の街は原子爆弾(ばくだん)を落とされ、焼け野原となります。そんな広島の街で、タヌキの教室はどうなったのでしょう。

 明治、大正、昭和にわたる広島の街の時の流れを、タヌキとともに見つめる不思議な物語。タヌキのおとぼけ顔と最後のオチに、笑みがこぼれます。低学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています