「とんでいった ふうせんは」 記憶表す鮮やかな風船

 
絵本塾出版 1650円

 ぼくは、弟より"思い出という風船"をたくさん持っている。ママとパパも、ぼくたちより思い出の風船をたくさん持っているよ。そして、風船を一番たくさん持っているのはおじいちゃんだ。ぼくたちよりずっと長く生きているから。でも、このごろのおじいちゃんは何度も同じ話ばかりして、風船が空に飛んでいってしまっても気が付かない。おじいちゃんは、どうして風船から手を放してしまうのかな。

 とうとう、思い出のつまった風船を全部飛ばしてしまったおじいちゃんは、もうぼくのことがわかりません。悲しむぼくに、両親がかけてくれた言葉とは...。

 記憶(きおく)がなくなることを、風船が空に飛んでいったからと考えると、温かな気持ちで老いを受けとめることができるかもしれません。

 モノトーンで描(か)かれた家族と、やわらかな色彩(しきさい)の色とりどりの風船の絵が、とても美しい絵本です。