「お蚕さんから糸と綿と」 絹糸命からできている

 
アリス館 1650円

 蚕(かいこ)は、チョウ目カイコガ科の昆虫(こんちゅう)。絹糸(きぬいと)をとるために改良された生きものです。繭(まゆ)を形づくるためにはき出す繊維(せんい)が、生糸(きいと)や真綿(まわた)になります。

 滋賀(しが)県で唯一(ゆいいつ)残る養蚕(ようさん)農家は、春と秋の2回"お蚕さん"を育て、糸とりをします。体長1センチ未満の幼虫(ようちゅう)1万頭に、1日3回桑(くわ)の葉を与(あた)え、20日間育てます。大きくなると1日に80キロもの葉を食べ尽(つ)くすようになるので、エサやりも大仕事です。

 次に蔟(まぶし)と呼(よ)ばれる小さな木枠(きわく)にお蚕さんを入れて繭になるのを待ち、8日後乾燥(かんそう)させて命を止めます。約80度のお湯で繭を茹(ゆ)で、一つの繭から細い繊維をたぐり、20本集めて撚(よ)ると見慣(みな)れた太さの一本の絹糸になるのです。

 "糸は生きている、命あるものからできている"と教えてくれる写真絵本。「お蚕さん」と丁寧(ていねい)に呼び、牛や馬と同じく「1頭」と数えることからも、人々にとって大切な存在(そんざい)であることが分かります。

 ※福島子どもの本をひろめる会が 推薦する本を紹介しています