「字のないはがき」 疎開した妹を思う家族

 
小学館 1650円

 私(わたし)の家は6人家族。怒(おこ)ると怖(こわ)いお父さんと、いつも静かなお母さん。そして私と弟と妹たち。戦争が激(はげ)しくなり、とうとう一番小さな妹も家族と離(はな)れ、遠い田舎(いなか)に疎開(そかい)することになりました。

 お母さんは妹の肌着(はだぎ)をたくさん縫(ぬ)って名札を縫い付けました。お父さんは数え切れないほどのはがきを用意し、はがきの宛名(あてな)に自分の住所と名前を書いて「元気な日は、はがきに丸を書いて毎日1枚(まい)ずつポストに入れなさい」と、字の書けない妹に言いました。

 遠足にでも行くように、うれしそうに出発した妹から届(とど)いた最初のはがきには、はみ出すくらい大きな丸が書いてありました。しかし、日を追うごとにはがきの丸は小さく小さくなっていき、やがて...。

 戦後75年。向田家で本当にあった戦争にまつわる家族の話が、かたちを変えて絵本になりました。家族を思う気持ちが痛(いた)いほど胸打(むねう)つこの作品は、より多くの親子に末永(すえなが)く読み続けられることを切に願う一冊(いっさつ)です。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています