「まぼろしの小さい犬」 目を閉じたら犬がいる

 
岩波書店 836円

 ロンドンで暮(く)らす少年ベンの夢(ゆめ)は、犬を飼(か)うこと。「誕生日(たんじょうび)に犬をプレゼントしよう」という祖父(そふ)の言葉を楽しみにしています。ところが、届(とど)いたのは「チキチト・チワワ」という名前が書かれた小さな犬の刺(し)しゅうの絵と、祖父からの謝罪(しゃざい)の手紙でした。

 気落ちしたベンは、祖父の飼い犬ティリーと遊ぶために、田舎(いなか)にある祖父母の家に出かけます。祖母の宝物(たからもの)だった「チキチトの絵」の由来を聞いても、気持ちは晴れません。ベンの"犬が欲(ほ)しい"という願望(がんぼう)は強くなる一方で、いつしか想像(そうぞう)の犬「チキチト」を飼うようになります。目を閉(と)じてチキチトと遊ぶことに心を奪(うば)われたベンは、ある日家族と買い物に出かけた先で...!

 日本で1970年代後半に翻訳(ほんやく)された物語の復刊(ふっかん)です。両親と姉2人、弟2人のにぎやかな家族の様子や、風変わりな祖父母とのやりとりが楽しく、揺(ゆ)れ動くベンの気持ちが丁寧(ていねい)に描(えが)かれた心に残る一冊(いっさつ)です。小学校高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています