「朔と新」 「きずな」握り走る兄弟

 
講談社 1650円

 大みそか、朔(さく)(高校2年)と新(あき)(中学2年)を乗せた高速バスが横転事故(じこ)を起こし、頭を強打した朔は失明してしまう。家族一緒(いっしょ)に車で出かけるはずだったが、弟の新と母親が衝突(しょうとつ)したことで、兄弟だけでバスに乗ったのだった。兄は早く自立したいとの思いで、盲(もう)学校の寄宿舎(きしゅくしゃ)に入った。一方、長距離(ちょうきょり)選手だった新は、高校からのスポーツ推薦(すいせん)入学を断(ことわ)り、陸上部も退部(たいぶ)して走ることをやめた。

 あの事故から1年4カ月がたった。家に戻(もど)ってきた朔が、弟が陸上をやめた事実を知ると「ブラインドマラソンに挑戦(ちょうせん)したい。伴走者(ばんそうしゃ)は新、おまえしかいない!」と言い出す。しぶしぶ兄の頼(たの)みを受け入れ、伴走者として走り出した新だったが...。

 一本のロープを握(にぎ)り共に走る兄弟が、閉(と)じ込(こ)めてきた本心をぶつけ合うようになっていく姿(すがた)を丁寧(ていねい)に描(えが)く、葛藤(かっとう)と絆(きずな)の物語。ランナーと伴走者をつなぐロープは実際(じっさい)「きずな」と呼(よ)ばれています。中学生から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています