「アーニャは、きっと来る」 勇気振り絞る人々描く

 
評論社 1540円

 第2次世界大戦中、羊飼(ひつじか)いの少年ジョーが住むフランスの山奥(やまおく)の村は、ナチス・ドイツ軍に占領(せんりょう)されてしまう。中立国であるスペインに接(せっ)する村は、国境(こっきょう)を警備(けいび)するドイツ軍の駐屯地(ちゅうとんち)となり、銃器没収(じゅうきぼっしゅう)や夜間外出禁止(きんし)など、平和だった村の暮(く)らしは一変していく。

 ある日、ジョーは森で謎(なぞ)の男に出会う。それは村の嫌(きら)われ者オルカーダさんの娘婿(むすめむこ)ベンジャミンだった。ユダヤ人の彼(かれ)にはアーニャという愛娘(まなむすめ)がいたが、逃走中(とうそうちゅう)にはぐれてしまっていた。やがてジョーは、彼がユダヤ人の子どもたちを集め、ひそかにスペインへ逃(に)がす活動をしていることを知る。"ユダヤ人の逃亡(とうぼう)に手を貸(か)す者は銃殺(じゅうさつ)する"と宣告(せんこく)され尻込(しりご)みする村人たちに、ジョーと家族は協力を求め命がけの逃亡作戦を手伝うことになるが...。

 戦争の恐怖(きょうふ)におびえながらも、勇気を振り絞(ふしぼ)り命をつないでいく人々の物語。ドイツ兵との友情(ゆうじょう)や人々の思いが丁寧(ていねい)に描(えが)かれ、タイトルの一文へと導(みちび)かれていく。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています