「とうちゃんはむしゃんよか」 祭り通した人々の交流

 
光村教育図書 1430円

 「大蛇山(だいじゃやま)」まつりは、福岡(ふくおか)県大牟田(おおむた)市で毎年7月に開催(かいさい)される夏祭りです。年ごとに「大蛇山」と呼(よ)ばれる山車(だし)がつくられ、祭りが終わると崩(くず)されます。

 おれのとうちゃんはだいじゃやまづくりの名人で、かっこいい(むしゃんよか)とうちゃんだ。ところが今年は、かあちゃんをなくして元気がなく、だいじゃやまをつくろうともしない。また、転校生のハジメくんは、東京弁(べん)をからかわれて以来何もしゃべらず、おれにくっついてばかりいる。

 そんなある日、地区のフジキさんが涙(なみだ)を流してとうちゃんに言った。「あんたは、おおむたのおとこじゃろうが」。やっと動きだしたとうちゃん。ハジメくんも大蛇山にとても興味(きょうみ)を持ち、作業場にやってきて熱心に見ている。

 伝統的(でんとうてき)な祭りを通して、地域(ちいき)の人々の心の交流が温(あたた)かく描(えが)かれます。大牟田弁の語りと、てらいのない素朴(そぼく)な絵が雰囲気(ふんいき)を醸(かも)しだし、色彩豊(しきさいゆた)かな大蛇山が躍動(やくどう)します。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています