「ぼくだけのぶちまけ日記」 少年の苦悩と再生描く

 
岩波書店 1870円

 カナダの田舎(いなか)町で、一家4人平凡(へいぼん)に暮(く)らしていた13歳(さい)のヘンリー。ある日突然(とつぜん)悲劇(ひげき)は起きます。ひどいいじめに苦しんでいた兄が父親の銃(じゅう)を持ち出していじめっ子を射殺(しゃさつ)し、自殺してしまうのです。周囲(しゅうい)のいやがらせに耐(た)えきれず母親は精神(せいしん)を病み、ヘンリーは父親とバンクーバーへ引っ越(こ)します。事実をひた隠(かく)し、大都会でひっそりと暮らす2人。しかし、学校でも近所でもヘンリーを放っておいてはくれません。新しい友達からは大好きなプロレス観戦を誘(さそ)われ、アパートの隣人(りんじん)は何かと世話を焼いてくれます。そんな人々との交流の中で次第に癒(い)やされていくヘンリーの心の傷(きず)。苦悩(くのう)と再生(さいせい)の数カ月が、ユーモアを交えながら正直に日記に綴(つづ)られます。

 いじめの問題、犯罪(はんざい)者家族の苦しみ、銃社会の恐怖(きょうふ)など今の社会問題が少年の視点(してん)から描(えが)かれ、痛々(いたいた)しくも、人々との交流の中で癒やされ、再生してゆく姿(すがた)が温(あたた)かな読後感を残します。中学生から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています