「雪山のエンジェル」 幻のキツネに導かれる

 
評論社 1540円

 ケニアの首都、ナイロビで暮(く)らす少女マケナの夢(ゆめ)は、父さんと同じ山岳(さんがく)ガイドになること。憧(あこが)れのケニア山に登った日、マケナは湖で幻(まぼろし)の美しいオオカミギツネに出会います。そんな両親との穏(おだ)やかな生活が、叔母(おば)の病気の知らせで一変します。叔母は伝染病(でんせんびょう)で亡(な)くなり、看病(かんびょう)のために叔母の元に向かった両親も帰らぬ人となってしまったのです。

 孤児(こじ)となったマケナは、預(あず)け先に耐(た)えきれなくなり、貧(まず)しい人々が死と隣(とな)り合わせで暮(く)らすスラム街へと逃(に)げ込(こ)みます。そこで親しくなったアルビノ(生まれつきメラニン色素(しきそ)を持たない遺伝子疾患(いでんししっかん))の少女スノウは、偏見(へんけん)のために命を狙(ねら)われる過酷(かこく)な日々を過(す)ごしていたのでした。

 幻のキツネに導(みちび)かれるように危険(きけん)を逃(のが)れ、生き抜(ぬ)くすべを学んでいくマケナが、夢(ゆめ)や優(やさ)しさを失わないスノウや仲間たちと、懸命(けんめい)に生きる姿(すがた)が胸(むね)に残る物語。遠い国の出来事を身近に感じさせてくれる一冊(いっさつ)です。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています