「彼方の光」 黒人奴隷2人の逃亡劇

 
偕成社 1760円

 1859年アメリカ。ケンタッキー州のハックラー農場から11歳(さい)の少年サミュエルと老人ハリソン、2人の黒人奴隷(どれい)が逃亡(とうぼう)した。何も知らされぬままハリソンに連れ出されたサミュエルは、当初は逃亡に疑問(ぎもん)を持っていたが、ともかく迫(せま)る追っ手から逃(に)げなければならなかった。捕(つか)まった奴隷が所有者に返される法律(ほうりつ)がある限(かぎ)り、永遠(えいえん)に自由はないのだ。

 サミュエルの母もまた奴隷で、彼(かれ)が幼(おさな)いころに農場からほかの所有者に売り飛ばされてしまった。突然(とつぜん)母を失ったサミュエルの面倒(めんどう)を見てきたのが、ハリソンと台所担当(たんとう)のリリーだった。なぜハリソンはサミュエルを連れ逃亡するのか。2人は逃げ切れるのか...。

 当時の実際(じっさい)のエピソードを基(もと)に、少年の目を通して、黒人奴隷の状況(じょうきょう)、逃亡を援助(えんじょ)する組織(そしき)「地下鉄道」の人々、懸賞金(けんしょうきん)目当ての捕獲者(ほかくしゃ)などが描(えが)かれた、ハラハラドキドキの逃亡の物語。誰(だれ)を信じるべきか...苦難(くなん)の道をゆく2人の心の変化も見逃(みのが)せない。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています