「おかえり、ウミガメ」 故郷目指す子ガメの物語

 
アリス館 1540円

 地球温暖(おんだん)化による海水面の上昇(じょうしょう)や埋(う)め立て、防波堤建設(ぼうはていけんせつ)などによってどんどん減少(げんしょう)する砂浜(すなはま)。その砂浜を産卵(さんらん)場所とするウミガメも絶滅(ぜつめつ)の危機(きき)にある。九州の南にある屋久島(やくしま)は、そんな今でも日本で一番多くのアオウミガメが生まれているところだ。

 5月。おかあさんウミガメが、産卵場所を探(さが)して砂浜を進んでいく。気に入った場所におちつくと、足で砂を掘(ほ)って100個(こ)ぐらいの卵(たまご)を産む。2カ月ぐらいたつと赤ちゃんウミガメが現(あらわ)れ、小さな体で海に向かう。さまざまな危険(きけん)をくぐりぬけたごくわずかな子ガメたちだけが、数年かけて太平洋を横断(おうだん)し、そこで十分大きくなって、再(ふたた)び故郷(こきょう)の屋久島に戻(もど)ってくるという。

 人間の暮(く)らしよりも長く、ずっとずっと古くからくり返されてきたウミガメと海の物語を、愛情(あいじょう)と時間をかけてていねいに追った写真科学絵本。この夏、海を見る目がちょっと違(ちが)ってくるかも。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています