「『ワタシゴト』14歳のひろしま」 原爆と自分、思い重ねる

 
汐文社 1540円

 中学3年の俊介(しゅんすけ)たちは、修学(しゅうがく)旅行で広島に行くことになりました。70年以上も前の爆弾(ばくだん)が落ちたときの話なんて聞きたくないと、俊介は渋々(しぶしぶ)参加したのでした。原爆資料館(げんばくしりょうかん)(広島平和記念資料館)で真っ黒に焦(こ)げた弁当(べんとう)を目にしたとき、数日前、母親への反抗心(はんこうしん)から作ってもらった弁当をテーブルからたたき落としてしまったことを思い出します。

 70年以上も前にこの弁当を持って出かけ、抱(かか)えたまま亡(な)くなったのはどんな人だったのだろうと思いをはせる「弁当箱」。ほかに「ワンピース」や「くつ」「いし」など悩(なや)みや家族への不満を抱えた5人の中学生の五つの物語。

 『ワタシゴト』は「渡(わた)し事(ごと)=記憶(きおく)を手渡すこと」と、「私事(わたしごと)=他人のことではない、私のこと」を意味する作者がつくった言葉です。

 1985~2019年までに、広島の原爆資料館を見学した修学旅行生は、およそ1352万人。平和と戦争を自分のこととして考え、伝えることの大切さに気づく物語です。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています