「オール・アメリカン・ボーイズ」 万引疑われた黒人少年

 
偕成社 1650円

 黒人の高校生、ラシャドは万引(まんびき)を疑(うたが)われ、白人の警官(けいかん)からひどい暴行(ぼうこう)を受け入院する。その場に偶然(ぐうぜん)居合(いあ)わせたのは、同じ高校の白人少年クインだ。警官はクインの親友の兄で、肉親のように慕(した)うポールだった。彼(かれ)の姿(すがた)に衝撃(しょうげき)を受けたクインは、何も見なかったことにし現場(げんば)から逃(に)げ出してしまう。

 事件(じけん)の動画がテレビやネットに流れると、2人が通う高校では黒人差別に対する抗議(こうぎ)デモが計画される。事件に対しさまざまな意見がある中、計画は市民をも巻(ま)き込(こ)む大きな流れになっていく。立場が違(ちが)うラシャドとクインだが、彼らは迷(まよ)い悩(なや)みながら、自分が"正しい"と判断(はんだん)した行動に突(つ)き進んでいく。

 黒人の作家と白人の作家が共に書き上げた本書は、少年たちを取り巻(ま)く背景(はいけい)とそれぞれの心情(しんじょう)をこまやかに描(えが)き、彼らの日常(にちじょう)を鮮明(せんめい)に伝える。根深い人種差別に限(かぎ)らず、私(わたし)たちの周りにももろもろの差別と、その意識(いしき)があることを改めて考えさせられる。中学生から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています