「くじらの子」 村に伝わる命がけの漁

 
少年写真新聞社 1980円

 10歳(さい)の少年エーメンの住むラマレラ村は、インドネシアの東、赤道直下のレンバタ島にある。人口約1500人、ガスも水道もないそぼくな村で、人々は400年にわたりモリ一本のつき漁で命をつないできた。

 5月から8月、4カ月間のクジラ漁がその中心だ。竹ざおの先にはめた鉄のモリを、クジラの尾(お)びれのつけ根にある急所めがけて打ち込(こ)む命がけの漁である。息たえたクジラに祈(いの)りをささげ、命をいただくことへの感謝(かんしゃ)の気持ちも忘(わす)れない。伝統(でんとう)的なこの漁で、毎年約10頭のクジラがとれる。それを島のみんなで公平に分け、あますところなく食べ尽(つ)くすのだ。

 多くの子どもたちが大きな町に就職(しゅうしょく)するようになった今でも、エーメンの夢(ゆめ)は変わらない。クジラとりになってみんなを食べさせること。大人たちにまじって船の上に立ち、しっかりと未来を見つめる少年の目がまぶしい。大自然とともに生きることのすばらしさときびしさを伝える写真絵本。

※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています