「ゴースト・ボーイズ ―ぼくが十二歳で死んだわけ―」 黒人少年、死後の心の旅

 
評論社 1650円

 12歳(さい)の黒人少年ジェロームは、ある日おもちゃの銃(じゅう)が原因(げんいん)で白人警官(けいかん)に撃(う)たれ死亡(しぼう)する。ゴーストとなったジェロームは、家族の悲しみを目の当たりにし、やるせない思いでこの世をさまよっている。ただ一つ不思議なことは、自分を撃った警官の娘(むすめ)セアラにジェロームの姿(すがた)が見えること。裁判(さいばん)が進み、死の真相が明らかになるにつれて、セアラと父親との信頼(しんらい)関係も崩(くず)れていく。

 「死んでからのぼく」と「生きているぼく」を章ごとに交えながら、周りにいる他のゴーストボーイズの過去(かこ)も語られる。それらを通してなぜ自分がゴーストとして存在(そんざい)するのか、生きる人々に何ができるのか、ジェロームの心の旅が優(やさ)しい気付きと共に続いていく。

 ブラック・ライブズ・マター運動の広がりの中「生きている人にしかこの世をよくすることはできない」との作者の思いが強く心に響(ひび)く。人種差別問題を海外の出来事と捉(とら)えるか否(いな)かで何かが変わるはず。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています