「ヤーガの走る家」 死者送る運命にもがく

 
小学館 1760円

 マリンカの家には、鳥の足がはえている。年に2、3度、真夜中に猛(もう)スピードで走り出す。祖母(そぼ)のヤーガ・バーバは死者をあの世に送り出す門の番人。12歳(さい)のマリンカは跡継(あとつ)ぎとして育てられた。バーバには「勝手に家の柵(さく)の外に出てはいけない」と言われているが、マリンカは"外の世界を見てみたい、死者を送るヤーガにはなりたくない"と思っている。

 ある日、マリンカは門の向こう側に行きたくないと言う少女を見つける。このまま側(そば)にいてほしいと思い、バーバや家に内緒(ないしょ)でかくまうことにする。しかし、少女の姿(すがた)は徐々(じょじょ)に透(す)けて見えるようになる。そして、二人で海で遊んでいる時、少女だけでなくマリンカの姿も透けてきた。「私(わたし)も死んでいるの?」...。

 ロシア民話のバーバ・ヤーガをモチーフに描(えが)かれた長編(ちょうへん)ファンタジー。自分の運命を受け止められない主人公がもがき苦しみながら、周りの人々や家の思いに気づき自分らしく生きていこうとする物語。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています