「お江戸豆吉 けんか餅」 威勢よく愉快な騒動記

 
フレーベル館 1210円

 ここはお江戸(えど)日本橋。評判(ひょうばん)高い菓子屋(かしや)の若旦那(わかだんな)米蔵(よねぞう)と見習い小僧(こぞう)の豆吉(まめきち)が、大八車を引いている。「火事とけんかは江戸の華(はな)」、とはいうものの、けんかっ早い米蔵はお客と大げんか。とうとう家を追い出され、浅草の古い小さな店で修業(しゅぎょう)の身となってしまったのだ。

 豆吉はその見張(みは)り役。菓子(かし)作りの腕(うで)は抜群(ばつぐん)ながら花火のような若旦那と、その若旦那にビクビクながらも一生懸命(けんめい)仕える豆吉。そんな2人をめぐる威勢(いせい)よく愉快(ゆかい)な騒動記(そうどうき)。けんか相手の建具職人(しょくにん)辰五郎(たつごろう)をはじめ、髪結(かみゆ)いのお竜(りゅう)、火消しの組頭など江戸の職人たちが生き生きと立ち回り、当時の暮(く)らしをのぞかせる。

 ところで事の発端(ほったん)のけんかの原因(げんいん)は、大福餅(だいふくもち)の皮は厚(あつ)いのがいいか薄(うす)いのがいいか、ということ。大福ならぬお正月のお餅でも食べながら寝(ね)っ転がって読むのもきっと楽しいよ。読書はちょっと苦手という君にも、わくわく新鮮(しんせん)な物語の世界が満喫(まんきつ)できそう。中学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています