「黄色い夏の日」 洋館で不思議な出会い

 
福音館書店 1980円

 坂の上に、三角帽子(ぼうし)の尖(とが)り屋根を頂(いただ)くその古い洋館はあった。中1の景介(けいすけ)が、何年も前から気になっている家だ。運良く家主のおばあさんと知り合い、夏休みに本の整理の手伝いに通うことになった。洋館の離(はな)れで一人の可憐(かれん)な少女ゆりあと出会い、美しく奔放(ほんぽう)な彼女(かのじょ)にひと目で心引かれた景介。同じ頃(ころ)、裏庭(うらにわ)の垣根(かきね)の向こうに住む小学生のやや子とも親しくなる。古い日本映画(えいが)に出てくるような家で、少し大人びたやや子との会話に違和感(いわかん)を覚えながらも、満ち足りた時が過(す)ぎていく...。

 菩提樹(ぼだいじゅ)の花のお茶、鍵(かぎ)付きの日記帳、探(さが)し続けていた昔の本、不思議な匂(にお)いを漂(ただよ)わせる古い洋館と庭一面に咲(さ)く黄色いキンポウゲの花...。その物たちと多感な少女だったおばあさんの思いが織(お)りなす妖(あや)しい夢幻(むげん)の世界の物語。表紙から続く挿絵(さしえ)は、作品の世界観を見事に表現し、物語に誘(いざな)ってくれる。少年が体験するひと夏の濃密(のうみつ)な時間を一緒(いっしょ)に味わってほしい一冊(いっさつ)。中学生から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています