「シリアからきたバレリーナ」 踊りに希望つなぐ少女

偕成社 1650円
シリアで暮(く)らしていた少女アーヤは、内戦が激(はげ)しくなり、イギリスに避難(ひなん)するため両親と弟と故郷(こきょう)を離(はな)れました。途中(とちゅう)、父親が海で行方不明になり、そのショックで母親は体調を崩(くず)してしまいます。
毎日幼(おさな)い弟を連れて難民申請(なんみんしんせい)に通っていたある日、大好きなバレエの音楽が聞こえてくると、アーヤは音に誘(さそ)われるまま外に出て音楽に合わせて踊(おど)り始めます。そんなアーヤを教室から見ていたドッティに誘われ、先生のミス・ヘレナの後押(あとお)しもありレッスンに通い始めます。アーヤは少しずつ気力を取り戻(もど)していくのですが...。
アーヤの回想による戦争の残酷(ざんこく)さや理不尽(りふじん)さに胸(むね)が詰(つ)まります。一方で懸命(けんめい)に手を差し伸(の)べるドッティの行動力や、幼いころ難民としてイギリスに来たミス・ヘレナの深い優(やさ)しさが希望を与(あた)えてくれます。バレエ教室の少女たちが悩(なや)み、成長する様子も描(えが)かれた読み応(ごた)えのある物語。今、一人でも多くの人に読んでほしい一冊(いっさつ)です。小学校高学年から。
※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています
- 「わらってよ ピッコ」 ポニーを笑顔に 兄と妹奮闘
- 「荒野にヒバリをさがして」 迷子の兄弟、心温まる絆
- 「大地をうるおし平和につくした医師 中村哲物語」 アフガンに井戸、65万人救う
- 「和ろうそくは、つなぐ」 職人の知恵、循環型の物作り
- 「てぶくろがいっぱい」 みんなの優しさ集まって
- 「戦争をやめた人たち・・・1914年のクリスマス休戦・・・」 敵兵士と共に歌、サッカー
- 「パンに書かれた言葉」 戦争の記憶、平和へつなぐ
- 「みんなの研究『女子サッカー選手です。そして、彼女がいます』」 性のあり方、個人を尊重
- 「ほじょりん工場のすまこちゃん」 春休みに自転車の特訓
- 「『オードリー・タン』の誕生」 心臓病や不登校乗り越え