「シリアからきたバレリーナ」 踊りに希望つなぐ少女

 
偕成社 1650円

 シリアで暮(く)らしていた少女アーヤは、内戦が激(はげ)しくなり、イギリスに避難(ひなん)するため両親と弟と故郷(こきょう)を離(はな)れました。途中(とちゅう)、父親が海で行方不明になり、そのショックで母親は体調を崩(くず)してしまいます。

 毎日幼(おさな)い弟を連れて難民申請(なんみんしんせい)に通っていたある日、大好きなバレエの音楽が聞こえてくると、アーヤは音に誘(さそ)われるまま外に出て音楽に合わせて踊(おど)り始めます。そんなアーヤを教室から見ていたドッティに誘われ、先生のミス・ヘレナの後押(あとお)しもありレッスンに通い始めます。アーヤは少しずつ気力を取り戻(もど)していくのですが...。

 アーヤの回想による戦争の残酷(ざんこく)さや理不尽(りふじん)さに胸(むね)が詰(つ)まります。一方で懸命(けんめい)に手を差し伸(の)べるドッティの行動力や、幼いころ難民としてイギリスに来たミス・ヘレナの深い優(やさ)しさが希望を与(あた)えてくれます。バレエ教室の少女たちが悩(なや)み、成長する様子も描(えが)かれた読み応(ごた)えのある物語。今、一人でも多くの人に読んでほしい一冊(いっさつ)です。小学校高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています