「秋」 落ちる戦闘機から人影

 
講談社 1760円

 表紙を開くと大きな「秋」の文字が、秋晴れの空の色と、コスモスのピンクと黒の3色で描(えが)かれています。作者の、かこさとしさんは、小さいころから秋が大好きでした。

 ところが、今から78年前の1944(昭和19)年、その秋が嫌(きら)いになった出来事がありました。日本はそのころ戦争をしていました。高校2年生のかこさんたちは、学校ではなく、工場に泊(と)まり込(こ)みで戦車の部品などを作っていました。

 そんな中、盲腸炎(もうちょうえん)になったかこさん。その手術(しゅじゅつ)をしてくれた先生も、お世話をしてくれたおばさんの一人息子も戦争で亡(な)くなってしまいました。そしてある日、空から煙(けむり)をふいて落ちてゆく日本の戦闘機(せんとうき)を見たのです。そこから飛び出した小さな人影(ひとかげ)は、落下傘(さん)が開かないまますごいスピードで下へ下へ...。

 「だるまちゃんとてんぐちゃん」「かわ」「宇宙(うちゅう)」など600を超(こ)える作品を残した、かこさとしさん。この絵本は、平和を強く願い続けた、かこさんの天国からのメッセージです。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています