「わたしとあなたのものがたり」差別の中、生きた母の願い

 
光村教育図書 1870円

 茶色い肌(はだ)の、利発で意志(いし)の強そうな少女が語りかける。「クラスには、茶色いはだの子どもは、ひとりしかいなかった。それが、わたし」。学校で奴隷制(どれいせい)について勉強した時、わたしはみんなの目を感じ消えてしまいたいと思った。でも、学校で勉強できるのはありがたいこと。学ぶことが好きで、特に科学が大好きだったわたしは、詩を書き、音楽を愛するお医者さんになった。そんなわたしが、奴隷制の歴史(れきし)と、その中を生き抜(ぬ)いてきた家族の歴史を娘(むすめ)に語る。まさに奴隷制のただ中を生きた人、自由人になっても3年までしか学校に行けなかった人、そして看護師(かんごし)になりたかったわたしの母さんのこと。

 奴隷制がなくなって久(ひさ)しい今も、人種差別やさまざまな差別は根強く続く。鏡に映(うつ)った自分に見えるものを信じ、どうどうと立ち空高くはばたいてほしい、という作者のメッセージが強く響(ひび)く。表情豊(ひょうじょうゆた)かな力強い絵が、物語を引き立て印象(いんしょう)深い。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています