「スネークダンス」 中学生の揺れる心、鮮やか

 
小学館 1540円

 ローマで生まれ育った中学2年の圭人(けいと)は、古い街並(まちな)みや建造物(けんぞうぶつ)をスケッチすることが好きだった。半年前、父がひき逃(に)げ事故(じこ)で亡(な)くなり、母と日本に引っ越(こ)すことになる。

 東京の祖父母(そふぼ)の家に住むことになった圭人。自転車で周辺の建物や景色をスケッチしてまわっていると、怪(あや)しい人物が取り壊(こわ)し予定の建物にスプレーで落書きをしている。なぜこんなことをしているのだろう。圭人は、軽快(けいかい)な動きと絵のダイナミックさに目を奪(うば)われる。

 転校初日、職員室(しょくいんしつ)で見かけた反抗的(はんこうてき)な女子生徒、それはあの落書き犯人(はんにん)、歩(あゆむ)だった...。歩に、圭人のスケッチは写真のようだと言われる。描(か)いている人の心が見えないと。歩の描く絵には迷(まよ)いがなかった。圭人は何を描きたいのか、何をしたいのか考え始める。

 中学生の揺(ゆ)れ動く心を鮮(あざ)やかに描(えが)いた青春小説。イタリアの古代建築(けんちく)や芸術(げいじゅつ)作品が少年の目線で語られ、イタリア在住(ざいじゅう)の作者ならではの描写(びょうしゃ)が一層(いっそう)物語を引き立てている。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています