「目で見ることばで話をさせて」 「聞こえない」への偏見と闘う

 
岩波書店 2310円

 19世紀初頭のアメリカ。ボストン南東部にあるマザーズ・ビィンヤード島では、遺伝性難聴(いでんせいなんちょう)により耳が聞こえないろう者が多かった。物語を作るのが大好きな11歳(さい)の少女メアリーと父親はろう者で、母親と兄は聴者だ。この島の住民は、互(たが)いに手話を使って会話ができ、ろう者への偏見(へんけん)はまったくなかった。

 ある日、ボストンから科学者と称(しょう)する青年が、なぜ島にろう者が多いのかを調査(ちょうさ)するためにやってきた。メアリーは、青年のろう者への偏見や傲慢(ごうまん)さに、怒(いか)りを覚えていく。

 突然(とつぜん)青年に誘拐(ゆうかい)され、ボストンに連れて行かれたメアリーは、ろう者への差別意識(いしき)に打ちのめされる。しかし、メアリーは両親の待つ島へ帰るため必死で考え行動するのだった。

 私(わたし)たちの持つ偏見や差別意識をなくすためには「相手を知る」ことが大事ではないでしょうか。この本は「手話で語り合う幸福」を教えてくれます。大人にもぜひ読んでほしい一冊(いっさつ)です。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています