「チャンス」 戦争、迫害を生いきのびた家族

 
小学館 1760円

 1939年9月、ドイツ軍はポーランドの首都ワルシャワを爆撃(ばくげき)。ソ連軍もポーランドに侵攻(しんこう)。こうして第2次世界大戦が始まった。

 ワルシャワ生まれのユダヤ人、4歳(さい)のウリは、一足先にワルシャワを脱出(だっしゅつ)した父のもとへ母と向かう。偶然(ぐうぜん)にもナチスによる「ユダヤ人狩(が)り」はまだ始まっておらず、トラックに乗り、歩いて国境(こっきょう)を越(こ)え、列車でロシア共和国ビャウィストクに到着(とうちゃく)。無事父と再会(さいかい)することができた。しかし、ある理由でソ連の市民権(けん)を取得(しゅとく)できなかった3人は、貨車に乗せられ北の海近く、極寒の居留地(きょりゅうち)に送られてしまう。

 たくさんのイラスト・写真とともに、絵本作家シュルヴィッツ自身が描(えが)く、戦争で各地を転々とした少年時代の記憶(きおく)。戦争、迫害(はくがい)、病気、飢(う)えなどの困難(こんなん)を乗り越(こ)え家族が生きのびられたのは、全くの偶然、「チャンス」だったと語る。以前に出版(しゅっぱん)された絵本「おとうさんのちず」のエピソードも描かれており、ぜひ絵本も併(あわ)せて読んでほしい。高学年から。

 ※福島子どもの本をひろめる会が推薦する本を紹介しています