「入居者間恋愛」は幻想?住人らが明かすシェアハウスの実態

 
都内下町にあるミッドセンチュリースタイルのシェアハウスに暮らす4人。撮影/徳永徹 (C)oricon ME inc.

 2012年10月、6人の男女が海の見える一軒家で共同生活を送るリアリティバラエティ番組『テラスハウス』(フジテレビ系)の放映がスタート。その人気から一躍注目を集めたのが「シェアハウス」だ。2014年前後に市場規模が急速に拡大し、近年では、賃貸住宅のひとつの形態として広く浸透している。シェアハウスがすっかり身近な存在となった今、利用するのはどんな人たちなのか。また、その暮らしの実態は…。都内下町の駅チカ物件に暮らす住人たちと、運営会社に話しを聞いた。

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■『テラスハウス』放送以降、需要も物件も急増。幅広い層へと浸透

 シェアハウスとは、ひとつの賃貸住居を親族ではない複数人と共有する共同居住型賃貸住宅を指す。ハウスシェアリングとも呼ばれ、その特殊性からドラマや映画の舞台になることも多い。過去にはフジテレビ系『ラスト・フレンズ』『人にやさしく』、日本テレビ系『シェアハウスの恋人』などで描かれている。

「当社は設立して10年目の企業ですが、2012~2013年に運営開始した物件が多く、需要が増加したタイミングも同時期からと思われます」と語るのは、シェアハウスを運営する「シェアカンパニー」の大越洋介さんだ。

 平成29年の国土交通省の調べでも、2005年頃までに運営を開始したシェアハウス業者は1%にも満たなかったのに対し、2006年以降、右肩上がりで増加。2014~2015年には、そのピークを迎えている。

「シェアハウスの運営を始めた当初は新しいものにアンテナを張っている、いわゆる“意識の高い人”からの問い合わせが多かったのですが、『テラスハウス』が放映されてからは広くシェアハウスという暮らし方が認知され、さまざまな層の方からの問い合わせが増ましたね」(大越さん)。

 現在、同社が運営している「シェアハウス」の入居希望者の平均年齢は31歳で、もっとも多いのは20代後半。男女別に見ると、男性54%、女性46%と、男性のほうが若干多いという。

「利用されている方の職業も様々です。印象としてはIT系の方が多いですね。単身赴任で妻子を残しておひとりで住まわれている方や、年収が1,000万円を超えるような方もいらっしゃいます」(大越さん)

 ちなみに、国土交通省の発表による入居者の男女比は「女性が圧倒的に多い」と回答した業者が約5割。「ほぼ均等」「女性がやや多い」を含めると、女性の多い物件が7割弱を占めている。ひとり暮らしをする上で、男性に比べて保安面を気にする女性が多く利用しているということは、それだけ安全・安心な物件が増えたということだろう。

■初期費用の安さ、新たな出会いやつながりなど、居住者が求めるものも多様化

 賃貸物件を探す際、今では選択肢のひとつとして提示されることも珍しくなくなったシェアハウス。現住人達はどんなところにメリットを感じて、そこに住むことを決めたのだろうか。

「私の場合は、初期費用の安さが決め手でした。家具や家電も買わなくていいし、準備するものが全然ないので、引っ越そうと思ったら数日で引っ越せるんです」と語るのは、シェアハウス歴4ヵ月・マスコミ勤務のF田さん(26歳・女性)。現在、彼女が暮らすシェアハウスには、家具・家電から食器に至るまで、生活に必要なものはほぼ揃っていたため、引っ越し時に持参したのは「服と布団くらい」だったという。

 一般的な賃貸住宅とは異なり、不動産会社への礼金や家賃債務保証会社への支払いが不要な物件が多いのも、シェアハウスならでのメリットだ。

 シェアハウス歴5ヵ月・IT関連会社で働くF島さん(28歳・男性)は「ふだん同じ業界の人としか話せないので、いろんな人と話をしてみたくて」という理由で、会社の寮からシェアハウスに引っ越すことを決めた。人間関係が希薄になりがちな今の時代、彼のように新たな出会いやつながりを求めてシェアハウスにやってくる人も少なくない。

 一方、キッチンやリビングなど、広い共用部に魅力を感じる人もいる。シェアハウス歴3ヵ月・医療関連の仕事に従事する傍ら、副業で家事代行を行うS山さん(35歳・女性)もそのひとり。料理好きな彼女にとって、ひとり暮らし向けの物件にはまず見られない、大きなキッチンがあることが、なによりも重要だったという。

 シェアハウス歴6年・建築業界で働くW辺さん(30歳・男性)の動機は、少々ユニークだ。「大学4年生のとき、海外留学したくて。ルームシェアやホームステイ、ゲストハウスなどで他人と共同生活することになっても大丈夫なように慣れておこうと思ったんです」。以来、住人数が8人程度の小規模な物件から100人を超す大規模な物件まで、4軒のシェアハウスを体験したが、「個人的に、人数が多いほうが圧倒的におもしろいですね」と話す。

■「シェアハウス=恋愛」は幻想?過度な期待は禁物と経験者

 「入居者間の恋愛」も気になる部分だ。初めてのシェアハウス生活を満喫中のF島さんも「それが目的じゃないけど、あったらいいなと思ってましたね」と本音を明かしたが、6年間シェアハウスを渡り歩いているW辺さんは「もちろん最初は期待しました(笑)。でも、実はそれほどなくて、それ以降はそういうもんだなと思っています」と話す。さらにシェアハウスでの恋愛には問題もある、とW辺さん。

「別れたあとも、距離が近いんでやっぱり色々あるんですよ。付き合ってた関係があるからつい気軽に部屋に行ってしまって、ズルズルしたりとか。以前住んでいた大規模ハウスのときには、夜通し女の子が部屋の前で待ってたこともありました」

 男女間のトラブル以外にも、共同生活ならではのストレスも少なからずあるという。「共有部分を汚す人がいて、イラッとすることも」(S山さん)「隣室で夜通しカラオケされてきつかった」(W辺さん)。国土交通省の調査でも、入居者間でトラブルが起こる場合、原因としてもっとも多いのは「清掃、ゴミ出しのルール違反」、「騒音」、「私物の共用部分への放置」で、全体の6割に該当する。

「確かにストレスがまったくないわけじゃないけど、それ以上の魅力がシェアハウスにはある」とF田さん。「職場とか友人のつながりとは違う、ふつうに生活していたら出会わない人に出会えたりとか。年上の友人も増えました」。F島さんは仕事上でのメリットも強調する。

「夜や休日に住人と仕事の話しをすることも多くて、良い刺激になっていますね。同じIT業界でもいろいろあるので、同業の人とは知識を教えあったり。異業種の人の話も興味深いです。会話の中から、人を紹介してもらったこともあって人脈が広がりました」。

■物件数が増える中、コンセプトがない物件は埋もれてしまう傾向に

 さまざまな理由からシェアハウスを選ぶ人が増える一方で、昨今では入居者の確保が困難な状況になりつつあるという。市場規模が急速に拡大し供給が過剰になったこと、一般的な賃貸住宅と比べシェアハウスは入居者の居住年数が短いことが、要因とされる。

 国土交通省のデータでは、平均的な居住期間は1年以上1年半未満が3割強ともっとも多く、2年以上住んでいる人は2割弱程度。「シェアカンパニー」が運営している物件でも「平均すると1年~1年半」という。もちろん、この状況に、運営側も手をこまねいているわけではない。

「清掃や設備のサービス面が充実している物件も増えています。週5の清掃、備品補充を行い、ビールサーバーや映画館設備がある物件などもあります。物件数がどんどん増えていく中、コンセプトがない物件は埋もれてしまう傾向にあるので、ユニークなものが増えていますね」(シェアカンパニー・大越さん)

 シェアハウスを探すにあたり10件以上、内見したというF田さんも、今どきのシェアハウスの多様さに驚きを隠せなかったという。

「個室の中にお風呂や洗面台といった水回りがある物件や、カラオケルームやシアタールーム、ジム、農園、カーシェアリングといった設備が充実した物件など、本当にいろいろあって。物件ごとにルールや住民の親密度もまったく違うので、いろんな人が自分に合う家を探せるようになってきている。だからこそ自分は何を重視するのか、明確にしておくことが大切だと思うんです」(F田さん)

 最後に、シェアハウス業界が抱える今後の課題と展望について、「シェアカンパニー」の大越さんはこんなふうに語ってくれた。

「居住者を確保するために金銭的なメリットばかりを押し出すシェアハウスが増えたことで、本来のシェアハウスの魅力である“人の繋がりによって得られる精神的な充実”が二の次になってしまっているように感じます。つながりが希薄な社会の中で、「古き良き長屋」のように、家に帰ると“おかえり”と言ってくれるシェアメイトがいる。この魅力はこの先も普遍的な価値として求められるだろうと思っています

 海外では主流の暮らし方のひとつであるシェアハウスですが、日本では現在都市圏でしか成り立っていないので、地方でもシェアハウスの魅力が認知され、広まることを期待していますし、そのために何ができるかを運営主体として考えていきたいと思います」。

(取材・文/今井洋子)