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【脚本家・倉本聰さん】 県民の深い痛み…共有しているか

【脚本家・倉本聰さん】 県民の深い痛み…共有しているか

「福島県民一人一人の深い痛みを理解しているのか。日本人はもう一度考え直すべきだ」と話す倉本さん

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難者らの再起に向けた歩みを支えるには、再び笑顔を取り戻してもらおうと寄り添う思いや、人と人とのつながりが欠かせない。東日本大震災から3年がたち、県外からの支援者らの目に福島はどう映っているのか。それぞれの立場で「福島のあるべき姿」などを模索し、見守る人たちをリポートする。

 原発事故の風化へ“警鐘”
 「短いはずだが長い。短いはずだが…」。脚本家の倉本聰さん(79)は震災、原発事故からの福島の3年という時間について、その言葉から語り出した。風化への懸念、便利さや豊かさを追求する現代社会への警鐘―。倉本さんの言葉から震災、原発事故以後に問われる福島、そして、日本の姿が浮かび上がる。未曽有の災害に直面する福島を幾度も訪れ、被災者に語り掛け、震災と原発事故をテーマにした演劇の創作を続ける倉本さんの目に映る、福島の姿とは何か。本県の現状、復興に歩む県民に寄せる思いなどを聞いた。

 ―福島が直面した震災、原発事故から3年という時間への率直な思いは。
 「短いはずだが長い。短いはずだが…。日本人は本当に物忘れする。そのことに愕然(がくぜん)とする。何一つ解決していない。先日、南相馬市で富良野GROUP公演『マロース』を上演した時、大熊町の牧場経営者と話す機会があった。マロースは鳥インフルエンザの話で、鳥の殺処分で鶏舎がつぶれる経営者の話が出てくるが、その牧場経営者からは原発事故で牛が殺処分された話を聞いた。経営者は泣く時間もなかったということだった。東京の人間、理屈だけを論じている人間が果たして、福島県民の一人一人の深い痛みを理解しているのか。津波で家が流された、放射能で家に戻れないなど、一人一人の痛みをどのくらいの日本人が共有しているのか。僕は忸怩(じくじ)たる思いだ」

 ―日本人は、福島の痛みを忘れてしまったのか。
 「(脱原発を訴えた候補が敗れた)都知事選の結果がシンボリックだった。経済主導社会だ。景気が良ければ良い。自分の生活が脅かされなければ良いというところに帰着するのだと思う。日本人の物の考え方はそのことがベースになっている。原発事故は今後も起こり得るという状況の中で皆真剣に考えていないように思える。東京の人間はチェルノブイリほどの強い危機感を、福島に対して持っていない。福島と聞くと東京まで怖いイメージを抱く外国人がいるのに、日本人はそれをも持たない。現実にそのことが渦巻いている。日本人はもう一度考え直すべきだ」

 ―原発事故後の国の原子力政策をどう評価するか。
 「(役者やシナリオライターを養成した私塾)富良野塾の塾生が1人、原発労働者として福島第1原発で働いている。先日『マロース』を鑑賞するため、いわき市から南相馬市まで来てくれた。髪が真っ白になって痩せていた。5次下請けで働いているという話で、1日の労働時間はたった15分。給料も決して高くない。汚染水問題でボロが出て、(廃炉作業の)現場が何一つ解決していないのに、総理大臣が原子力の技術を輸出するとなぜ言えるのか。輸出は考えようによっては非核三原則にも背くことになるのではないか。核をばらまくことにつながるのではないか。人間が性悪になっていると、どのように悪用されるか分からない。倫理観を伴わない科学が出てきた。昔の科学者はプラトンにしてもアリストテレスにしても哲学者だった。福島のような事故が二度と起こらないと断言できない中で(原子力を)推進することが不思議で仕方ない」

 ―心に傷を負った被災者の苦悩や葛藤、原発事故の不条理さを表現した新作「夜想曲―ノクターン」を来春本県で上演する計画だが、作品に寄せる思いは。
 「福島の住民の意識も変わっているのではないか、と考えている。生々しいものをやって、福島の人が今どう思うのか。思い出すのも嫌だという人、思い出したからどうなるのかと思う人もいる。(昨夏の初演の原稿を)書き換えようと思っている。公演までには筆を入れたい。原発誘致以前の絆や『結い』に満ちた福島がどうだったのか。原発が来るまでの住民生活は裕福でなくとも満足に暮らしていたのではないか。貧しくとも幸せがあったと思う。福島にもともとあった善意を思い出してもらえる作品に改稿しようと思う」
(2014年3月11日 福島民友ニュース)



 

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