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海端に響く“槌音” 浜通り・沿岸部各地で復旧、復興進む

【いわき・土地区画整理】薄磯の日常取り戻したい

薄磯の町に日常が戻ることを心待ちにする鈴木さん

 東日本大震災で津波に襲われた浜通りの沿岸部各地では、東京電力福島第1原発20キロ圏内の旧警戒区域外を中心に、海岸堤防や防災緑地の工事など復旧、復興に向けた槌(つち)音が響いている。津波で浸水した農地での作付け再開や本格的な漁業の復活などさまざまな課題を抱えながらも、津波被災地の復旧、復興は歩みを進める。

 【いわき・土地区画整理】薄磯の日常取り戻したい 
 80キロの海岸線があるいわき市は、津波で沿岸部に深刻な被害を受けた。市は、住宅地を海岸から遠ざけて再配置する震災復興土地区画整理事業などで災害に強いまちづくりを進めている。
 同事業の実施区域の一つ、平薄磯は102人が犠牲となった(関連死を除く)。静かな波音が絶えず聞こえる民宿「鈴亀」の代表鈴木幸長さん(61)は「家が立ち並び、人が歩き、隣近所が声を掛け合う震災前の日常を早く取り戻したい」と事業完了を待ち望む。
 土地区画整理事業は膨大な手続きと労力がかかる。被災家屋の撤去、土地の境界の画定、新たな土地の割り当て。さらに権利関係の整理や財源確保、住民合意など必然的に長期間を要する事業だ。鈴亀は親の代から約50年続く。震災では床上約1.5メートルまで浸水、修復を経て震災の年の秋に再開した。家屋が流され、窓明かりがなくなり暗くなった薄磯で「鈴亀」の看板に明かりがついたとき、近所から喜びの声が上がったという。
 「自分たちはどこに住むことになるのか」。副区長でもある鈴木さんには多くの声が届き、仮換地指定が決まるまでは不安を抱く住民が多かったというが、仮換地後は落ち着いている。鈴木さんは「そこに住むという気持ちの踏ん切りがついたからかな」と推測する。
 鈴木さんは区域内にも土地を持ち、そこは仮換地で内陸部に宅地が割り当てられた。薄磯が再生し、多くの人が来るようになったとき、民宿も大きく建て替える計画という。「震災前に見てきた地元住民の笑顔が早く見たい」。鈴木さんの脳裏には再建した薄磯の姿が浮かぶ。

 【相馬・農地再生】「コメ豊作間違いない」
 津波で浸水した農地で作付けを再開する動きも進む。水田約1100ヘクタールが水に漬かった相馬市は約515ヘクタール(1日現在)で作付けを再開しており、来年度までに968ヘクタールの復旧を見込む。
 このうち同市岩子地区では、東農大の支援を受け、2011(平成23)年9月から土を入れ替えずに農地を除塩する手法で水稲栽培を進める。養分補給や放射性セシウムの吸収抑制に効果があるとして、津波土砂を除去せず土と混ぜ込む手法。併せて肥料成分を含む製鋼スラグを使い、土壌改良と降雨による除塩を加速させている。11年に1.7ヘクタールでスタートした事業は今年、200ヘクタールまで拡大した。
 岩子農地復興組合の組合長を務める佐藤紀男さん(64)は、沿岸部近くの今年作付けした水田を前に「船や車、家のがれきなどが土の上を覆い、1メートル以上は水に漬かっていた」と震災当時を振り返る。東農大の津波土砂を農地に混ぜ込む方式について佐藤さんは「東農大の人たちが客観的なデータを示してくれたので心配はなかった」と話す。同大の茎と葉の検査で放射性物質は全て検出限界値未満だった。震災前に個別販売していた顧客は3人まで激減したが、佐藤さんは「今年の豊作は間違いない。安全でおいしいコメを味わってほしい」と前を向く。
 
 【いわき・防災緑地】「記憶を後世に」
 津波で大きな被害を受けたいわき市南部の岩間地区に県が整備する防災緑地は、地元のNPO法人「勿来まちづくりサポートセンター」が中心となり、地元住民の意向を反映させながらの計画策定が進む。
 同地区では6月から毎月、防災緑地利活用検討委員会が開かれ、地元区長や行政関係者、同センターの関係者らがそれぞれの立場で自由に意見を出し合っている。
 現在の構想では、津波の記憶を後世に伝えようとモニュメントを設置したり、地下に体験談を収めた映像などをタイムカプセルとして保管する考え。記憶を後世に伝え、犠牲者を慰霊する「津波被災伝承ゾーン」、地域住民らが交流する「地域交流ゾーン」、アート展示や音楽会などを通じ交流する「芸術公園ゾーン」の3区域の整備が計画されている。同センターの舘敬理事長(62)は「防災緑地は画一的につくるのではなく、各地域の特徴を生かしてつくっていくべきだ」と考えを語る。

 「海岸復旧」27カ所完了
 県による海岸堤防などの復旧は福島第1原発20キロ圏内の旧警戒区域外を中心に始まっている。7月末現在で災害査定が行われた海岸154カ所のうち109カ所で工事が始まり、うち27カ所で完了。同区域外の復旧工事は2015(平成27)年度中の完了を目指している。
 旧警戒区域内の海岸復旧工事は、復旧作業の実施を判断する災害査定の実施後5年以内の復旧完了を目指している。浪江、富岡両町の避難指示解除準備区域で17年度、双葉町で18年度の完了を目指しており、一部で工事に着手している。
(2014年9月7日 福島民友ニュース)



 

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