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原発災害・「復興」の影
帰れない
 
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一部地域で帰還諦める可能性 「元の生活取り戻せない」

一部地域で帰還諦める可能性 「元の生活取り戻せない」

会議で町政を説明する渡辺町長(中央)。中間貯蔵施設の調査で帰還をめぐる情勢は大きく変化した=17日、会津若松市

 「帰還を進めても何人戻るか。高齢者ばかりで限界集落となる可能性もある」。
大熊町長の渡辺利綱(66)はそう思いながら会津若松市にある町役場の町長室で、町と復興庁が行った意向調査の結果を資料を見ずに説明した。「『町に戻りたい』は11%」。帰還希望は70代以上では20%近いが、子育て世代の30代では5%にも満たない。
 渡辺は6月の町議会の一般質問に対し「居住、帰還を諦めざるを得ない区域が発生する可能性があるかもしれない」と答弁した。渡辺はこの答弁まで、帰還を前提に復興を進める「帰還推進派」と目されてきた。「帰れない場所が出てくるかもしれないという思いは避難した当初からあった」と明かすが、「帰還推進」の基本方針は必要だと今も思っている。「ほかの場所に自分で家を建てられる人にとって(元の町に縛り付けるような)行政は足かせにすらなる。一方で、行政に頼らざるを得ない人もいる」
 
 中間貯蔵がきっかけ
 その渡辺が一部区域で「帰還を諦める可能性」に言及したきっかけは、中間貯蔵施設設置の調査の受け入れだった。公式の場では「調査イコール設置受け入れではない」と言うものの「大きな方向性が示されている」と考えている。調査地には住宅地も含まれる。5月に現地調査が始まったのを受けて答弁を決めた。
 同町商工会長の蜂須賀礼子(61)は「会員が1軒でもある限り商工会を存続させる」と言い続けてきた。除染が本年度完了する大川原地区に町が復興拠点を設ける計画があり、会長として「役場が戻るならば商工会も」と考えている。しかし、「娘と大熊以外で暮らしたい」というのも正直な思いだ。「いつの間にか、会長としての言葉と町民としての言葉を使い分けるようになった」
 
 疲弊する避難者の姿
 その蜂須賀が「慎重な人」と評する渡辺の答弁の背景には、疲弊する避難者の姿がある。蜂須賀らが暮らす会津若松市の応急仮設住宅では避難者に帯状疱疹(ほうしん)などの症状が目立ってきた。「頭より先に体にストレスが出ている」。蜂須賀は帰還の可能性が曖昧なままの今の状態は限界にきていると感じている。
 渡辺は「元の生活を取り戻すというところまでいかないかもしれない」と考えているが、町長として「何とか大熊町は残したい」との思いも強い。そのためには双葉郡全体の将来設計が必要だと考え始めている。(文中敬称略)

(2013年9月18日 福島民友ニュース)



( 2013年9月18日付・福島民友新聞掲載 )
 

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