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原発災害・「復興」の影
帰れない
 
【 10 】
現実味欠く「復興策」 大人の責任果たし“子らの世代”へ

現実味欠く「復興策」 大人の責任果たし“子らの世代”へ

「帰るか、帰らないか」。吉田さんは子どもが将来、選べるようにするのが大人の責任だと思っている=三春町

 「『まち』は『ひと』だ。誰もいない街に役場や社会インフラを整備するのか」。東日本国際大教授の福迫昌之(46)=地域社会論=は行政の復興策が現実感に乏しいと考えている。「2、3年先の未来があって10年後の未来がある。そこに人がいなければ、ただ消えゆく運命の街をつくることになるのではないか」
 町に戻ってのまちづくりは「(帰りたいという回答が少なかった)帰還に関する意識調査結果からも、正直なところ想像できない」。町村の壁を越え、双葉郡南部のどこかに郡内町村を集約してコミュニティーを設けるのが、双葉地方が生き残る道だと考えている。
 「仮の町(町外コミュニティー)」も矛盾をはらんだ仕組みだ―と福迫は指摘する。そこが避難者のニーズに合った、住みやすいものになればなるほど、帰還をためらう避難者は増える。また、一時的な居住地である限りは、住民と避難者のあつれきはなくならず「共生ではなく、差別へと進む恐れもある」とみる。
 矢祭町長時代に独自の地方自治を実践、全国に知られた根本良一(75)は、原発事故に伴う避難や帰還への対応は「市町村でできる範囲を超えている」と強調する。県が指導力を発揮すべきなのに実際はそうなっていないとも感じている。「全員とは言わないが、県や市町村の職員は『大過なく勤め上げる』という意識が強く、想定外の事態への対応に向いていない。市町村職員は避難者とじかに接するので動かざるを得ないが、県はそうはならない」
 国にも不満がある。「全部の除染はできない。除染費用で新たな町をつくり、仕事を用意するのもできたはず。早い段階で避難地域の土地を買い上げる法律をつくるなどすべきだった」
 富岡町から三春町に避難する吉田大志郎(29)は、5歳の長男が避難前の写真を見て発した一言に驚いた。「前に住んでたおうち」。長男は避難した時には、まだ2歳。覚えていると思わなかった。横では三春で生まれた8カ月の次男が寝息を立てている。
 吉田は時々、2人を連れて富岡に行く日のことを想像する。「ここが俺の古里だ」と語り掛けたら、2人はどんな顔をするのだろう。そして10年後か20年後、こう言えれば最高だ。「ここに帰るか帰らないか、おまえたちが決めるんだ」。帰る選択肢もしっかり提示するのが、大人の責任だと思う。(文中敬称略)=「帰れない」おわり

(2013年9月23日 福島民友ニュース)



( 2013年9月23日付・福島民友新聞掲載 )
 

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