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原発災害・「復興」の影
炉を廃する
 
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見えない廃炉完了の“具体像” 東電内定者「覚悟が必要」

見えない廃炉完了の“具体像” 東電内定者「覚悟が必要」

「被災者だからこそ地元の声を感じながら仕事がしたい」。遠藤さん(右)はそう決意して東電に入社する=福島高専

 「廃止措置シナリオは、廃棄物の処分見通しなどを踏まえた上で策定する」。東京電力福島第1原発の廃炉作業の流れを示した政府、東電などによる工程表は、廃炉の終了目標を「30〜40年後」とする。しかし、肝心の「廃炉終了」がどのような状態を指すのかは、まだ決まっていない。
 「取り出した燃料や膨大ながれき、汚染水を処理して放射性物質が付いた吸着剤をどうするのか。処分方法を決めないと廃炉にも影響する可能性がある」。原子炉を処理する技術の集約を目的として8月に創設された国際廃炉研究開発機構の理事長、山名元(はじむ)(60)は廃炉の在り方が定まらないのを危惧する。
 原発の廃炉事例が増えつつある米国でも、原子炉から取り出した燃料が敷地内に残ったままというケースがある。福島第1原発の溶け落ちた燃料や汚染がれきの処理方法、保管場所はまだ決まっていない。「米国は土地も広いので、放射性物質が住民に与える影響は少なく、廃棄物の埋設処分も楽にできる」とする一方で「日本は狭く、法制度の面からも放射性廃棄物の処理は米国より百倍難しい」と山名は強調する。
 そして山名は、完了の具体像というゴールが見えないことで、たびたび起きるトラブルへの対応がまちまちになっていることを懸念する。「一番大事なのは、どうすればリスク(危険性)を減らせるかだ」。場当たりの対応に終始するあまり、将来的なリスクを高めている恐れもあるという。「今の対応は長期的に見て誰のためにもならない」
 工程表を改定した6月から資源エネルギー庁原子力発電所事故収束対応室長の新川達也(46)は「今は目先の汚染水問題に注力している」と、次々に起きる汚染水問題の対応に追われ、廃炉完了の姿を描くことまで手が回らないと認める。
 工程表によると、廃炉終了の具体像をまとめるのは2018(平成30)年ごろとなる見通しだ。
 「被害者から加害者に立場が変わる。覚悟が必要だと思った」。福島高専で電気工学を学ぶ広野町の遠藤祐己(20)は、東電が事故後初めて行った採用試験を受け来春の就職が内定した。母は反対したが「被災者だからこそ、地元の声を感じながら仕事がしたい」と押し切った。「(廃炉が)難しいことは分かっている。それでも30年、40年後、古里に戻ってこられる安全な環境をつくりたい」(文中敬称略)=「炉を廃する」おわり

(2013年11月6日 福島民友ニュース)



( 2013年11月6日付・福島民友新聞掲載 )
 

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